6月にMIT Technology Reviewが伝えた通り、アップルがモバイルセキュリティの専門家を驚かせたのは今秋公開される新バージョンのプレビューリリースでモバイルOSの重要な部分の仕組みを簡単に検査できるようにしたからだ。この変更により、アップルが開発したコードに含まれる、より多くのセキュリティ上の問題が発見され、修復されると見込まれている。
7日、アップルが強調したのはiOSの2度目のβリリースにある新方針だ。1度目のベータ版が以前のリリースと異なっていたのは、カーネル(デバイス内のアプリが何ができるかを制御する機能)を誰でも見られるようにしたことだ。iOSのセキュリティの専門家のレポートでは、新しいベータ版では他の多くのコンポーネントも明らかにされているという。
セキュリティー研究者のマシュー・ソルニックさんはMIT Technology Reviewに「これまでの方針とは大幅に違う」と語った。ソルニックさんらによれば、アップルはiOSのコードを暗号化してわかりにくくすることで、iOSの仕組みを調べにくくしていた。暗号化を解除して多くの人が目にすれば、バグが発見されやすくなり、アップルに報告されることを狙っているのだ。
アップルは長い間、自社製品のセキュリティを自慢してきた。しかし今年カリフォルニア州サン・バーナディーノで起きた大量銃殺事件の犯人が使っていたデバイスのロックを解除するようFBIから要求されたことに端を発して、当局と膠着状態に陥り、アップルのモバイルOSはこれまで以上に細かく調査された。その後FBIは問題のデバイスをハッキングするよう第三者に有償で依頼し、アップルにセキュリティを強制的に解除させることはあきらめた。一方のアップルは、ハッキングでデータにアクセスできることが判明してしまい、セキュリティ機能をさらに強化する必要に迫られた。
こうした背景があるにもかかわらず、アップルはセキュリティ研究者のためにiOSのコードを隠すのをやめた、とは述べていない。アップルはiOS 10の第1回プレビュー・リリースが注目された当初はコメントを控えていたが、後になって声明を発表し、パフォーマンスの向上のために方針を転換したと述べた。だがパフォーマンス上のどんなメリットがあるのかアップルは説明してない。また7日にも、さらにオープンになったiOSの新しいベータ版についても発言はなかった。