KADOKAWA Technology Review
×
【3/14東京開催】若手研究者のキャリアを語り合う無料イベント 参加者募集中
Apple Doubles Down on New Openness for iPhone Code

アップルがiOS 10ベータ版で
コードを公開した真意

アップルがiOSの内部を第三者が詳細に調べられるようにしたことで、セキュリティが大幅に向上にするかもしれない。 by Tom Simonite2016.07.07

6月にMIT Technology Reviewが伝えた通り、アップルがモバイルセキュリティの専門家を驚かせたのは今秋公開される新バージョンのプレビューリリースでモバイルOSの重要な部分の仕組みを簡単に検査できるようにしたからだ。この変更により、アップルが開発したコードに含まれる、より多くのセキュリティ上の問題が発見され、修復されると見込まれている。

7日、アップルが強調したのはiOSの2度目のβリリースにある新方針だ。1度目のベータ版が以前のリリースと異なっていたのは、カーネル(デバイス内のアプリが何ができるかを制御する機能)を誰でも見られるようにしたことだ。iOSのセキュリティの専門家のレポートでは、新しいベータ版では他の多くのコンポーネントも明らかにされているという。

セキュリティー研究者のマシュー・ソルニックさんはMIT Technology Reviewに「これまでの方針とは大幅に違う」と語った。ソルニックさんらによれば、アップルはiOSのコードを暗号化してわかりにくくすることで、iOSの仕組みを調べにくくしていた。暗号化を解除して多くの人が目にすれば、バグが発見されやすくなり、アップルに報告されることを狙っているのだ。

アップルは長い間、自社製品のセキュリティを自慢してきた。しかし今年カリフォルニア州サン・バーナディーノで起きた大量銃殺事件の犯人が使っていたデバイスのロックを解除するようFBIから要求されたことに端を発して、当局と膠着状態に陥り、アップルのモバイルOSはこれまで以上に細かく調査された。その後FBIは問題のデバイスをハッキングするよう第三者に有償で依頼し、アップルにセキュリティを強制的に解除させることはあきらめた。一方のアップルは、ハッキングでデータにアクセスできることが判明してしまい、セキュリティ機能をさらに強化する必要に迫られた。

こうした背景があるにもかかわらず、アップルはセキュリティ研究者のためにiOSのコードを隠すのをやめた、とは述べていない。アップルはiOS 10の第1回プレビュー・リリースが注目された当初はコメントを控えていたが、後になって声明を発表し、パフォーマンスの向上のために方針を転換したと述べた。だがパフォーマンス上のどんなメリットがあるのかアップルは説明してない。また7日にも、さらにオープンになったiOSの新しいベータ版についても発言はなかった。

関連ページ

人気の記事ランキング
  1. AI crawler wars threaten to make the web more closed for everyone 失われるWebの多様性——AIクローラー戦争が始まった
  2. Promotion Innovators Under 35 Japan × CROSS U 好評につき第2弾!研究者のキャリアを考える無料イベント【3/14】
  3. Inside the race to archive the US government’s websites 米政府系サイトが続々閉鎖、 科学者らが緊急保存作戦
  4. From COBOL to chaos: Elon Musk, DOGE, and the Evil Housekeeper Problem 米「DOGE暴走」、政府システムの脆弱性浮き彫りに
  5. What a major battery fire means for the future of energy storage 米大規模バッテリー火災、高まる安全性への懸念
トム サイモナイト [Tom Simonite]米国版 サンフランシスコ支局長
MIT Technology Reviewのサンフランシスコ支局長。アルゴリズムやインターネット、人間とコンピューターのインタラクションまで、ポテトチップスを頬ばりながら楽しんでいます。主に取材するのはシリコンバレー発の新しい考え方で、巨大なテック企業でもスタートアップでも大学の研究でも、どこで生まれたかは関係ありません。イギリスの小さな古い町生まれで、ケンブリッジ大学を卒業後、インペリアルカレッジロンドンを経て、ニュー・サイエンティスト誌でテクノロジーニュースの執筆と編集に5年間関わたった後、アメリカの西海岸にたどり着きました。
▼Promotion
U35イノベーターと考える 研究者のキャリア戦略 vol.2
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る