KADOKAWA Technology Review
×
A Mississippi Power Plant Highlights All That’s Wrong with “Clean Coal”

クリーン・コールに懲りない
米歴代政権の闇

ケンパー計画で数十億ドルの支出オーバーになりながら、二酸化炭素を低減させる石炭火力発電は実現しようにない。 by Michael Reilly2016.07.06

「クリーン・コール」による炭素排出量の削減を掲げたオバマ政権にとってケンパー発電所は最重要プロジェクトだ。だが、プロジェクトは今、大変なことになっている。当初24億ドルを予定していた総事業費が70億ドルに迫りつつあるのだ。さらに、二酸化炭素を回収、貯留しながら、どうやって利益を生み出すつもりなのか、誰にもわからない。

3日に掲載されたニューヨーク・タイムズ紙の詳細な調査によれば、ケンパー・プロジェクトの無駄な支出、隠ぺい、曖昧さを示す数々の兆候が判明した。現場の状況が劇的かつ迅速に改善しなければ、ケンパーは連邦政府の「クリーン・コールはコスト効率がよい」という基本的な仮定も間違っていることになる。

残念ながら、ケンパーは何十年にもおよぶ研究と数十億ドルが投じられた開発の歴史で、少なくと採算性と実現可能性の意味で、クリーン・コールの「矛盾」を示す最新の例にすぎない。以前にも、たとえばジョージ・W・ブッシュ政権下で廃止されたFurtureGenの発電所建設計画から、カナダのバウンダリーダム・プロジェクト、石炭最大手のピーボディー・エナジーの破産まで、どれもが「二酸化炭素を排出しない石炭火力発電」というまず成功することがあり得ない発想に賭けていた。

実際にわかったのは、どれだけ大金を投じても、石炭を燃やして二酸化炭素を取り除くのは、どんなに大規模の都市基盤を検討しても費用がかかりすぎるという証拠の山が高くなることだけだった。ニューヨーク・タイムズ紙が記事にしているように、電力などの都市基盤整備は強力な州の政治家に支援され、クリーン・コールの費用をまかなうために電気料金を強引に引き上げるのでないかぎり、まず実現しない。クリーン・コールが、二酸化炭素を排出しない未来の米国に導くことは、まずあり得ないのだ。

関連ページ

人気の記事ランキング
  1. The winners of Innovators under 35 Japan 2024 have been announced MITTRが選ぶ、 日本発U35イノベーター 2024年版
  2. Kids are learning how to make their own little language models 作って学ぶ生成AIモデルの仕組み、MITが子ども向け新アプリ
  3. The race to find new materials with AI needs more data. Meta is giving massive amounts away for free. メタ、材料科学向けの最大規模のデータセットとAIモデルを無償公開
タグ
クレジット Image courtesy of XTUV0010 | Wikimedia Commons
マイケル レイリー [Michael Reilly]米国版 ニュース・解説担当級上級編集者
マイケル・レイリーはニュースと解説担当の上級編集者です。ニュースに何かがあれば、おそらくそのニュースについて何か言いたいことがあります。また、MIT Technology Review(米国版)のメイン・ニュースレターであるザ・ダウンロードを作りました(ぜひ購読してください)。 MIT Technology Reviewに参加する以前は、ニューサイエンティスト誌のボストン支局長でした。科学やテクノロジーのあらゆる話題について書いてきましたので、得意分野を聞かれると困ります(元地質学者なので、火山の話は大好きです)。
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る