深層学習でタンパク質設計を支援、創薬や新材料研究を加速
ワシントン大学の研究者グループが開発した「プロテインMPMM(ProteinMPNN)」は、深層学習を使ってタンパク質の設計を支援することで、がん治療や新材料の研究に役立つ可能性がある。 by Melissa Heikkilä2022.11.08
新しい人工知能(AI)ツールは、これまで研究者に知られていなかったタンパク質を発見し、まったく新しいタンパク質を設計するのに役立つ可能性がある。より効率的なワクチン開発が可能になり、がん治療の研究が加速し、まったく新しい材料を作り出せるかもしれない。
2020年、アルファベット(グーグル)傘下のAI研究所であるディープマインド(DeepMind)は、生物学における「難問」の1つである、タンパク質の形状の正確な予測を深層学習を使って解決するツール「アルファフォールド(AlphaFold)」を発表して世界を驚かせた。タンパク質は生命の基本的なものであり、その形状を理解することはタンパク質を扱う上で不可欠だ。今年7月、ディープマインドはアルファフォールドが科学的に知られているすべてのタンパク質の形状を予測できるようになったと発表した。
9月15日のサイエンス誌に掲載された、ワシントン大学の研究者グループによる2編の論文で紹介された新しいツール「プロテインMPMM(ProteinMPNN)」は、アルファフォールドを強力に補完するものだ。
これらの論文は、深層学習が科学者に新しい研究ツールを提供することで、タンパク質設計に革命をもたらすことを示す最新の例だ。従来、研究者は自然界に存在するタンパク質を微調整することでタンパク質を設計してきた。だが、プロテインMPMMは研究者がゼロからタンパク質を設計できる、まったく新しい世界を切り開くことになる。
「自然界でタンパク質は、太陽光からエネルギーを得ることから分子を作ることまで、基本的に生命に関するすべての問題を解決します。すべての生物学はタンパク質から始まります」。論文の共著者の1人であるワシントン大学タンパク質設計研究所(Institute for Protein Design)のデビッド・ベイカー所長はこう述べる。
「生物が進化の過程で直面した問題を解決するために、タンパク質は生物の進化の過程につれて進化してきたのです。しかし現在の私たちは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のような新しい問題に直面しています。進化の過程で進化してきたタンパク質が古い問題を解決するのと同じように、新しい …
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