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「環境にやさしい」
LED照明が告げる
暗い空の終わり
Adam Schmid/Getty Images
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Bright LEDs could spell the end of dark skies

「環境にやさしい」
LED照明が告げる
暗い空の終わり

夜の街を照らす街灯として、ナトリウム照明に代えてLED照明を導入する例が増えている。消費電力が低く、自然環境に優しい選択のように見えるが、一方でLED照明が「光害」を起こしているとの指摘がある。 by Shel Evergreen2022.10.07

2016年のある晩遅く、ジョン・バレンティンはグランドキャニオン国立公園のシンボルであり、見晴らしが良く、滅多に空くことがないマーサーポイントに一人で立っていた。月が傾き、澄み切った空の闇が残る。銀河系を構成している星々が頭上で整列するかのように見えた。眼下には古代の峡谷の漆黒の裂け目が広がり、彼は時空から解放されたような感覚に驚きを覚えていた。

国際ダークスカイ協会(IDA:International Dark-Sky Association)の主任コンサルタントである天文学者のバレンティンには、この光景を大いに楽しむ特別な理由があった。この公園は、彼の協力のもと、「類い希な」星空を体験できる公共公園「国際ダークスカイ公園(International Dark Sky Park)」の仮認定を受けたばかりだった。このような真の闇を体験できる場所は、地球上でもほとんどない。実際、およそ320キロメートル離れたアリゾナ州の都市ツーソンでの光景はまったく異なるものだ。ツーソンでは、街の明かりの光子が空に散乱し、星の輝きを隠すスカイグローと呼ばれる光のドームが形成される。今や、この現象は大都市では一般的なものとなっている。

科学者らは、このような光害が拡大しつつあること、そして人間や野生生物に害を及ぼす可能性があることを何年も前から知っていた。米国医師会による2016年の報告によると、人間の場合、夜間における光への曝露が増えると睡眠サイクルが乱され、がんや心血管疾患との関連が指摘されている。一方、光害による生態系への影響は世界中に及ぶ。雄のコオロギは繁殖パターンに影響を受け、相手を呼ぶ夜間ではなく、日中に鳴くようになる場合がある。ウミガメの赤ちゃんは、孵化するとすぐに海に飛び込んで捕食者から逃れるように進化してきた。ところが、海岸付近の光によって方向感覚を失うことがある。フクロウは、こっそりと獲物に忍び寄れる優位性を失う。木々でさえ苦しむことになる。周囲の明るさによって季節を正しく認識できなくなり、葉を保つ期間が長くなり、芽吹きが早まることがあるのだ。

天文学者、政策立案者、照明専門家は皆、光害を減らす方法を模索している。その多くは、街灯などの屋外設備に発光ダイオード(LED)を設置することを提唱するものだ。LED街路灯は、ワット数では従来のナトリウム蒸気式街路灯に匹敵し、より効率の良い選択となる場合もある。しかし、決定的な違いは、狙った範囲に光を向けることができ、必要な光とエネルギーが少なく済むことだ。

パリ、ニューヨーク、上海など、世界の大都市の中には、エネルギーと費用を節約するため、すでにLEDが広く採用されている場所もある。しかし、LEDへの切り替えとは、一部の人が期待するような単純な万能薬ではないことを示す研究も増えている。LEDを導入することによって光害が悪化することも少なくない。光害を減らすには、エネルギー効率の高い照明器具を購入するだけでは不十分だ。都市は暗い夜空に優しい政策を策定し、その政策を成功させるための製品を照明の専門家が設計・製造しなければならない。ポーランドのグダニスク工科大学建築学科のカロリナ・ジエリンスカ・ダブコウスカ助教授をはじめ、多くの光害の専門家は、それを今すぐに始めなければならないと言う。国際エネルギー機関(IEA)によると、LEDはすでに世界の照明器具の売上の過半数を占めている。最新のLEDは初期投資額が高く耐久性に優れているため、最初に移行する段階において都市は正しく選ばなければならない。さもなければ、数十年後に悪影響に直面する可能性がある。

ジエリンスカ・ダブコフスカ助教授は、LEDの可能性と欠点を誰よりもよく理解しているのかもしれない。2000年代、彼女はさまざまな照明会社で勤務し、ニューヨーク市の「トリビュート・イン・ライト(Tribute in Light)」メモリアルなどの注目プロジェクトに携わった。この印象的な展示は、9.11で失われた2棟の世界貿易センタービルをイメージした2本の光線を空に向かって発するものだが、2002年の完成後間もなく、渡り鳥を惹きつけてしまうことが判明した。

現在では、鳥を追い払うために時折電源を切っている。だが、光害は最終的にジエリンスカ・ダブコフスカ助教授にとって無視できない問題となり、彼女は解決策の研究を作品としてまとめた。「私は変化を起こしたかったのです」とダブコフスカ助教授は言う。

光害には主に4つの要素があると、ジエリンスカ・ダブコフスカ助教授は説明する。最も識別しやすいのはスカイグローで、これは何百キロメートルも離れた渡り鳥に影響を与えることがある。もうひとつは、光子が境界線を越えて侵入してくる光害だ。窓から侵入する光は、睡眠や概日リズムに影響を与える可能性がある。一方、グレアはコントラストの変化で、明るい場所から暗い場所に入ったときに起こり、目を慣らさせるものだ。最後に、大きなものが、必要以上に物を照らす過剰照明だという。

LEDは、これら4つの問題すべてに対処できる可能性を持っている。例えば、LED電球は、遠隔操作で調整・プログラムできる「スマート」な筐体に設置できる。「LEDはコントロールできます。0%まで暗くできるのです」。

ツーソン市は2016年に街灯にスマート照明制御を導入し、1万8000個のナトリウム灯を遮蔽型LEDに交換し、光が上方に逃げるのを防いでいる。バレンティン主任コンサルタントが筆頭研究者となった2018年の研究では、この移行後にツーソンのスカイグローが7%減少したことが判明した。これらの照明の「色温度」(光の暖かみや冷たさを表現するための業界指標)は、穏やかな3000K(ケルビン)である。しかし、この色温度は昨年発表された国際ダークスカイ協会の屋外照明に関するガイドラインを上回っており、研究者の間では、限界温度としてはより暖かみがある2200Kが適切だという意見で一致している。ケルビン値の高い、青みがかった涼しげな色調の照明が、人や動物の概日リズムを乱し、健康や環境にさまざまな影響を与えるという明確な証拠が示されている。

LEDへの切り替えは、環境問題の勝利として賞賛されるのが常だが、専門家によれば、LEDは極端に使われることがしばしばあるという。ツーソン在住で国際ダークスカイ協会のテクニカル担当役員を務めるピート・ストラッサーによれば、問題の1つは、ロサンゼルスなどの都市が、街をより明るくする効果を謳って、白色LED照明を過度に使用していることだ。当時、ロサンゼルスの街灯担当部長だったエド・エブラヒミアンは、LED街灯に関する201 …

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