中国南部では最高気温が45℃に達するなど、世界でもかつてないほどの猛暑が70日間続いており、深刻な干ばつや水力発電の供給不足など、住民生活に大きな被害が出ている。中でも特に猛暑の被害を受けているのは、電気自動車の所有者たちだ。公共充電設備が一時的に閉鎖されたり、使用が制限されたりしているからだ。所有者の多くは専用の充電設備を持っていないため、突然、毎日の通勤に必要な電力確保が非常に難しい状況に陥った。
電気自動車(中国では新エネルギー車両と呼ばれている)の導入は、中国では「気候変動へのすばらしい対処方法」だとみなされることが多い。しかし、異常気象のせいで世界の電力網は混乱を増しており、電気自動車を走らせるための充電インフラの弱さが改めて浮き彫りになっている。
中国では、6月から記録的な猛暑が続いている。南西部の四川省は通常、電力の81%を水力発電でまかなっているが、水力発電に必要な水の半分以上が蒸発してしまった。そのため、冷房の必要性が高まる時期に電力供給量が減ってしまい、同地域の工業生産と日常生活に支障をきたしている。
また、電力供給が不安定になったことから、中国政府はより重要な日々の電力需要を優先確保するため、電気自動車の充電制限を実施している。
中国の出版物が報じたところによると、四川省とその隣接地区である重慶では、猛暑前は数分で営業中の充電スタンドを見つけられたのに、8月下旬時点では2時間もかかっているという。同地域では、テスラや、中国のニーオやシャオペンといった大手電気自動車メーカーが運営するステーションを含む公共充電スタンドの大半が閉鎖されている。政府が商用電力の使用を制限しているからだ。
プライバシーを理由に匿名希望とした四川省の中国人テスラオーナーがMITテクノロジーレビューに送ったスクリーンショットを見てみると、四川省の省都である成都近郊にある31カ所のテスラ・スーパーチャージャー・ステーションのうち、8月24日に通常通り営業していたのは2カ所だけであることが分かる。
電気自動車の所有者たちは、サービスが強制停止されているうえに、オフピーク時にのみ充電するよう奨励(または強制)されている。実際、国内大手事業者であるTELDも、電力使用のピーク時間帯の午前8時から午前0時までは、同地域に120カ所以上ある充電スタンドを閉鎖している。また、中国最大の国有電力会社であり、電気自動車充電スタンドの建設・運営もしている国家電網は8月19日に、「人口が1億4000万人以上、電気自動車数が80万台以上の3省で夜間に充電したドライバーには、50%オフのクーポンを発行します」と発表した。国家電網はさらに、35万台の充電ポストの日中の効率を低下させている。こうすれば、各自動車の充電時間は5〜6分長くなるが、ピーク時の …