米ホワイトハウス(大統領府)の「国家AIイニシアチブ室(NAIIO)」の初代室長だったリン・パーカーがこのほど退任した。2021年1月に発足したNAIIOは、米国における人工知能(AI)の開発促進を目的として、AIに関わるさまざまな連邦政府機関を調整するための機関である。
NAIIOの目標は、AIの研究開発、特に信頼できるAIの開発と活用における米国のリーダーとしての地位を確立することであり、より良い教育と訓練によってAIに携わる米国の労働人口を確保することにある。
パーカーは初代室長として、国家AI研究開発戦略計画の立案、国立AI研究所の設立、研究者の資金申請を支援するAIポータルの構築を監督した。また、AIの測定・評価方法に関する調査も実施した。
パーカー元室長は現在、テネシー大学ノックスビル校のAIイニシアチブ(AI initiatives)所長として学術界に戻っている。
MITテクノロジーレビューは、NAIIOの成果や、米国におけるAIの大きな課題について、パーカー元室長にインタビューした。なお、以下のインタビューは、発言の趣旨を明確にするため、要約・編集されている。
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——在任中のNAIIOにおける最大の成果は何でしょう?
NAIIOは、研究開発、AI活用のガバナンス、教育・人材育成、国際協力、連邦政府におけるAI活用など、非常に幅広い領域を網羅しています。NAIIOは、そうした幅広い領域における活動を改善するのに役立っています。多くのコミュニケーション・チャンネルを設置し、すべてのAI分野の活動に優先順位をつけ、調整する方法を確立しました。そのおかげで、効率的かつ効果的な進歩が遂げられたと思います。
——今後取り組むべき最重要課題は何ですか?
研究開発の分野に関しては、インパクトのある成果につながる、良質かつ長期的な研究に、継続的な投資を実施すること。そして、将来恩恵を得られる次世代のAIを構築できるようにすることが課題だと考えています。
信頼できるAIを開発し、活用するために、多くの基本原則を実際にどのように実現していくのかも課題です。
教育や労働人口といった分野において、AIはある意味、新しいテーマになりつつあります。しかし、数学を例にすれば、全員が高度な微積分を理解する必要はなく、多くの人は代数を理解すれば十分です。AI分野も同じことです。多くの人はAIの基本的な概念や能力を概念レベルで知っておけばいい。一方で専門家には、新 …