生物工学によって作られた角膜により、移植前には完全に目が見えなかった人を含む、目の不自由な人たちの視力が回復した。
8月11日に『ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotechnology)』誌に掲載された研究成果によって、移植用角膜が不足している国々において、これまでよりも低価格で視力回復を実現できるようになるかもしれない。2週間以内に移植が必要なヒトの角膜とは異なり、生物工学によって作られた角膜は最大2年間保存が可能なため、特に必要性の高い人々の元に届けやすい。
この角膜インプラントは、人間の皮膚と構造が似ているブタの皮膚から抽出したコラーゲンタンパクから作られる。作成に使用するコラーゲン分子は浄化して、動物の組織や生物要素が残らないよう処理されている。この角膜を作ったスウェーデンのリンシェーピング大学の研究チームは、結合が解かれた分子を安定化させ、ヒトの角膜を模倣するよう設計されたハイドロゲルの骨格へと変えた。このハイドロゲルは、目に移植するのに十分な頑丈さを備えていた。
イランとインドの外科医らが、進行した円錐角膜により視力を失ったり、視力を失いかけたりしている20人を対象に予備的な治験を実施した。円錐角膜は、目の最も外側に位置する透明な層である角膜が薄くなって、目が適切に焦点を合わせられなくなる病気だ。角膜インプラントにより、角膜の厚みと曲率が回復し、手術前には視力がまったくなかった参加者14人全員の視 …