どのようなファクトチェック作業でも、「横読み」と呼ばれる習慣が核になる。これは、多数のタブを開き、多くの情報を検索して、断片的なネット上の情報の事実関係や情報源、主張を確認することを意味する。だから、ポインター学院(Poynter Institute)、ユーガブ(YouGov)、グーグルによる新たな調査で、Z世代が先行するどの世代よりも横読みの手法を採用していることが示されたことは、すばらしいニュースのように思えた。
グーグルの検索エンジンチームが誤情報の取り扱い方法を何点か変更することに伴い、8月11日に発表した調査では、7つの大陸にわたるZ世代(この調査では18歳から25歳までと定義される)から沈黙の世代(68歳以上)までの8000人以上に、誤情報そのものや、疑義のあるオンライン・コンテンツの調べ方について尋ねた。
今回の調査は基本的に、若い人たちの方が、誤っていたり、誤解を生む恐れのあったりする情報を、意図せずシェアしたかもしれないと考える傾向があると結論づけている。多くの場合は、感情的なコンテンツを迅速にシェアする必要があるというプレッシャーに駆られてのことだという。ただし、若い世代は高度なファクトチェック手法の活用により長けてもいる。
Z世代の回答者の3分の1は、情報確認に当たっては常に、またはたいていの場合、横読みを実践していると回答し、その割合はベビーブーム世代の2倍以上になっている。若年世代の約3分の1は、複数の検索エンジンで検索して結果を比較し、検索結果の最初のページに留まらず次ページ以降も確認するとも回答している。
調査の一部では,誤情報の経験や、誤情報を止めるか拡散するかについての自分自身の役割に関して、さまざまな地域のさまざまな世代の興味深いスナップショットが示されている。例えば、全回答者の62%はインターネットで誤情報を毎週目にすると考えている。Z世代、ミレニアル世代、X世代の読者は、誤情報を特定する能力により自信を持っており、親しい家族や友人がインターネット上の誤解を招きかねない情報を信じてしまうのではないかと心配する割合も高い。
ただし、この調査は、回答者が自分の見解や習慣を正確に報告しているという前提に依拠している。Z世代の実際の習慣についての楽観的な自己像は、インターネット情報の確認方法に関する他の知見とかなり際立った違いを示している。
ファクトチェックの実践について研究するスタンフォード大学のサム・ワインバーグ教授は、その理由を理解できていると考えている。インターネット上での実際の行動の仕方を理解しようとするなら、「自己報告はナンセンスです」とワインバーグ教授は話す。
「口で説明する自分の行動と、実際の行動との違いです。この乖離は社会心理学の最初期の時代に遡ります」。同教授の研究では、若者は、介入されなければめったに横読みやその他の高度なファクトチェック手法を自らは実行しないことが判明している。
ワインバーグ教授らのチームが主導した最近のある研究では、ファクトチェック手法のオンライン講習が大学生の情報確認方法の改善をもたらすかどうかを調べた。講習前には、調査した学生87人のうち、横読み、すなわち、評価を求められたWebサイトを離れて外部情報源を参照したのはわずか3人だった。
「人々が自発的に横読みをしていたら、状況ははるかに良くなるでしょう」とワインバーグ教授は語った。
より大規模なある研究では、3000人以上の高校生に、インターネット上の一連の主張についての調査を依頼した。結果はかなりお寒いものだった。被験者である生徒の半数以上は、米国の不正投票の「強力な証拠」が含まれる、ロシアで撮影された匿名のフェイスブック映像を真に受けた(筆者は、ファクトチェッカーの方法を観察し、その方法を歴史家やスタンフォード大学の学部生が用いる方法と比較する、ワインバーグ教授のチームによる以前の研究に参加したことがある)。
Z世代は明らかに先行世代とは異なる方法でインターネットを利用している。だが、若者も、長年にわたって悪しきオンライン慣行を煽ってきたものと同じ罠、すなわち、誤情報戦術という武器や、シェアしなければならないというプレッシャーに弱い存在だ。