過激化する米国の禁書運動、教員に照準 ネット監視に威嚇発砲も
人種問題や性的指向に関する本やカリキュラムを学校から排除しようとする運動が米国で過激化している。教員に対し、ソーシャルメディアでの発言を監視したり、暴言を浴びせたりする嫌がらせが相次ぎ、現実の暴力行為に発展するケースも出てきた。 by Tanya Basu2022.07.18
7月12日の真夜中、ナンシー・ヴェラは1発の銃声で突然目覚めた。弾丸は彼女の家に当たってはね返った。すぐに防犯カメラを確認すると、1台のトラックが走り去っていくところだった。
ヴェラはショックを受けたが、驚きはしなかった。米国教員連盟(AFT:American Federation of Teachers)テキサス州コーパス・クリスティの支部長であるヴェラは、少し前に開かれたプライド・イベントで、女装した男性と一緒に、LGBTQが登場する本を地域の子どもたちに配っていた。
セクシャル・マイノリティが中心となるこのイベントは、地域の親たちと交流し、子どもたちに本を配るのに適した楽しい機会だと思ったのだ。だが、地元の保安官をはじめとする保守的な人たちは、このイベントを「米国の若者に対するグルーミングと教化」の典型例と呼んだ。「グルーミング」というのは、陰謀論Qアノンの信奉者が使う中傷言語で、権力者や組織が子どもたちを誘惑して性的人身売買に引きずり込んでいるという主張に基づくものだ。
「このような暴言は殺人に結びつくことになります」とヴェラは言う。
ヴェラが暮らすコーパス・クリスティ市は、キリスト教徒や保守派グループが米国中でますます強硬に推し進めている、ある運動の発火点となった。子どもたちに不適切だとみなされる本や話題を、学校の図書館や教育カリキュラムから排除しようという運動だ。この運動はどんどん卑劣なものになっており、教員個人のソーシャルメディアを狙ってあら探しをして、嫌がらせをすることもある。
7月9日には、保守派グループの「自由を守る州市民たち(CCDF)」がコーパス・クリスティで公開セミナーを開き、学校のカリキュラムの監視と「教員、学校の理事、学区の職員、投票で選ばれた役員たちのソーシャルメディアの精査」について話された。だがその内容は事実上、教育関係者をネット上でつけ回し、嫌がらせをする方法を教えるものだった。
https://twitter.com/frankstrong/status/1544430546427731970
表現の自由を守る非営利団体(NPO)「PENアメリカ(PEN America)」の「自由な表現と教育」担当役員であるジョナサン・フリードマンは、「現在の禁書運動については昨年の夏から情報収集していますが、教員や職員をつけ回して監視する計画的な活動は初めて見ました」と話す。
フリードマンは、コーパス・クリスティで実施されたCCDFのセミナーは米国中で続発する禁書運動にとって重要な転換点を意味すると言う(CC …
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