「世界最悪」は、どこの国も避けたい不名誉だ。現在インドでは、有害物質にまみれた大気のせいで年間110万人が亡くなっており、地球上で最も致命的な大気汚染が発生する国として確固たる地位を築いている。
中国の都市がスモッグに覆われる様子は誰もが目にしてきたし、中国の大気汚染は長年の間、死者数で世界最悪だった。現在インドがほぼ同じ状態にあるが、インドと中国は異なる方向に歩んでいる、と2月14日に公表された世界大気環境に関する新しい報告書は述べている。
ボストンの保健影響研究所(HEI)とシアトルの保健指標評価研究所(IHME)の共同研究によれば、1990年以降、欧米等の大半の先進国では、大気を浄化する措置を継続してきた。中国は長年の間、大気汚染の象徴だったが、政府の規制が強化されており、大気汚染が原因とみられる死者はここ5年間で横ばいが続き、死亡率は着実に下落傾向にある。
インドは事情が異なる。2010年から2015年にかけて、大気汚染で年間の死者は95万7000人から110万人に悪化した。死亡率は変わらない一方で、急激な工業化、エネルギーとしての石炭依存率の高さ、人口増加、大気汚染の影響を受けやすい高齢者の増加等の複合的要因があり、ある研究者はニューヨーク・タイムズ紙に「インドにとって破滅的な状況」と述べた。
もちろん、どの国も経済成長を追求している。インドだけが大気汚染が健康に与えている悪影響に厳しく対処すべきとはいえない。13日のガーディアン紙の記事によれば、中国からサウジアラビアまでの多くの都市で大気汚染が悪化しており、ほんの30分、大気汚染による死の主要因である微細粒子に吸い込むだけで、サイクリングによる健康増進効果を打ち消してしまう。
(関連記事:The New York Times, The Guardian, “機械学習は大気汚染を解決できるか,” “How Dirty Is Your Air?”)