経営者は長年、自社の従業員がどんな風に時間を過ごしているのか知りたがっていた。最新のオフィス監視テクノロジーにより、従業員の監視は以前よりずっと簡単になっているようだ。
ブルームバーグの記事によると、従業員の行動を追跡するセンサーをオフィスに取り付ける企業が増えているという。センサーは、照明や壁、机の下(どこに人がいるか、どれだけの時間、そこで話したり動いたりしているか、を測定したい場所ならどこでも)に隠されている。
生データの収集は始まりにすぎない。ニュー・サイエンティスト誌の最近の記事によれば「ステータストゥデー」というスタートアップ企業は、ソフトウェアにより、社員証でドアロックを解除した瞬間から、従業員が自分のコンピューターで使うアプリケーションの種類まで分析している。従業員や事業全体が、どう活動しているのかを把握するのが目的だ。
支持派は、監視データから得られる知見によって、企業を合理化したり、潜在的な問題を発生前に検出したりできるという。もしかすると、オフィスにある机のうち、使われているのはいつも全体の3分の2だけかもしれない。であれば、オフィス規模を縮小し、賃料を節約できるかもしれない。あるいは、ある従業員が機密データを大量に閲覧していたり、社外での打ち合わせの予定をたくさん入れてたりしているかもしれない。この場合、システムは潜在的なセキュリティ・リスクとして、行動にフラグを立てる。実際に問題が発生すれば、会社の経営者は夜も寝られなくなる。
一方でこの種の計画からは不気味をぬぐいきれない。ビッグブラザー風の監視システムにも思える。
不気味な印象を持たれるリスクを、あえてとる会社もある。監視システムが、従業員全体をもっと創造的で生産的な集団にしてくれると望んでいるのだ。ボストン・コンサルティング・グループ(マンハッタン)の豪華な新オフィス、英国の国民保健サービスや、プロフェッショナルサービスファームのデロイト等では、従業員は(自発的に)行動を追跡させている。ヒューマナイズという会社製のバイオ計測機器を身につけているのだ。
計測器は、センサーで動きや音、位置等を測定し、各社が自社の従業員の行動を正確に調査できるようにする。クレインズの記事によると、この種の機器は「待ち時間(latency)」まで測定できるという。つまり「ある人がどれだけ長い時間、誰に対しても言葉を発せずにいるか、あるいは、いつ、どこで、誰に向けて言葉を発するか」を調べられるのだ。こうすることで、たとえば、ある特定の小会議室が、従業員にとって最良のブレイン・ストーミングの場になっていると判明するかもしれない。あるいは、キッチンスペースでのおしゃべりが長すぎる、とバレてしまうかもしれない。
給料泥棒は、厳しい監視により、怠け者の正体を暴かれることに怯えるだろう。一方で、他の従業員は、監視機器の侵入を受け入れざるを得ない。ブルームバーグがいうとおり、米国では職場内の記録は完全に合法だ。というわけで、冷水機のところに長居はしないように。
(関連記事:Bloomberg, New Scientist, Crain’s, New York Post)