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軍需に沸くAI企業、
ウクライナ侵攻で
スタートアップにも商機
Ms Tech | NYPL
人工知能(AI) Insider Online限定
Why business is booming for military AI startups 

軍需に沸くAI企業、
ウクライナ侵攻で
スタートアップにも商機

ロシアによるウクライナ侵攻によって各国の軍は兵器の刷新、AI技術の導入を進めている。軍事AIや自律兵器をめぐる倫理的な問題は棚上げされ、シリコンバレーのスタートアップは好機をつかもうとしている。 by Melissa Heikkilä2022.08.10

今年2月、ロシアがウクライナに侵攻してからちょうど2週間後、データ分析企業のパランティア(Palantir)のアレクサンダー・カープ最高経営責任者(CEO)は、欧州の指導者たちに積極的な売り込みをかけた。カープCEOは公開書簡を送り、戦争が目前に迫る中、欧州各国はシリコンバレーの助けを借りて兵器を近代化すべきだと主張したのだ。

カープCEOは、欧州が「外国による占領の脅威を打ち砕くのに十分な強さを維持する」ためには、欧州各国は「テクノロジーと国家との連携関係を深めること、つまり長年兵器を供給してきた軍需企業の独占を解こうとする破壊的企業と、資金を提供する政府との連携」が必要だと綴った。

欧州各国は、呼びかけに応じる姿勢を見せている。北大西洋条約機構(NATO)は6月30日、10億ドルのイノベーション基金を設立すると発表した。この基金は、人工知能(AI)、ビッグデータの処理、自動化といった、「優先的な」テクノロジーを開発している初期段階のスタートアップとベンチャー・キャピタルへの資金提供を目的としている。

ウクライナ侵攻が始まって以来、英国は明確に防衛のための新しいAI戦略を立ち上げた。そしてドイツは、軍への1000億ドルの資金投入のうち、5億ドル弱を研究とAIに割り当てた。

書籍『I, Warbot:The Dawn of Artificially Intelligent Conflict(私は戦争ボット:AI戦争時代の夜明け)』(2021年刊、未邦訳)の著者で、キングス・カレッジ・ロンドンで防衛研究を主導するケネス・ペイン研究部長は、「戦争は変化を促進します」と言う。

ウクライナ戦争によって、より多くのAIツールを戦場に投入しなければならないとの切迫感が高まっている。各国軍が最新テクノロジーを搭載した兵器を慌ただしく導入しようとする中で、もっとも得をするのはパランティアのように利益を得ようと考えるスタートアップ企業だ。だが、AIの軍事利用をめぐっては、長年にわたる倫理的な問題が残っている。AIテクノロジーがますます高度化するにつれて問題の緊急性が高まっているにもかかわらず、AIの軍事利用を制限する動きは鈍く、規制が導入される可能性は極めて低い。

テック業界と軍の関係は、これまで必ずしも良好だったわけではない。グーグルは2018年、従業員の怒りと抗議行動を受けて、米国防総省のプロジェクト・メイブン(Project Maven)から撤退した。プロジェクトは、ドローン攻撃の改善のための画像認識システムを構築するというものだった。この件が契機となり、自律型兵器用のAI開発をめぐる人権とモラルの問題について、白熱した議論が交わされることになった。

チューリング賞を受賞したカナダの計算機科学者ヨシュア・ベンジオ、先進的なAI研究機関「ディープマインド(DeepMind)」の共同創業者であるデミス・ハサビス、シェイン・レッグ、ムスタファ・スュレイマンら著名なAI研究者は、殺傷能力のあるAIの研究には取り組まないと誓約した。

しかし、それから4年経った今、シリコンバレーはこれまでにないほど、世界各国の軍に接近している。大企業だけではなくスタートアップにもようやくチャンスが訪れている、と指摘するのは、米人工知能国家安全保障委員会(NSCAI)の元事務局長であるユーリー・バイラクターリだ。バイラクターリは現在、全米におけるAI導入の促進を目的としたロビー団体「特別競争研究プロジェクト(Special Competitive Studies Project)」で働いている。

なぜAIなのか

軍事用AIを販売する企業は、自社のテクノロジーの能力について幅広く主張している。履歴書の振るい分け、人工衛星データの処理、データのパターン認識など、兵士が戦場でより迅速に意思決定できるようにするため、日常的な業務から殺傷行為に関わるものまで、あらゆることにAIが役立つというのだ。画像認識ソフトウェアはターゲットの特定に役立ち、自律型ドローンは陸上、空中、水上での監視や攻撃、陸上よりも安全に兵士へ物資を供給するのに役立つといった具合だ。

キングス・カレッジ・ロンドンのペイン研究部長は、各国の軍が保有するAIテクノロジーは、まだ実戦配備された実績がほとんどない実験段階にあり、時には成果が上がらないこともあると話す。AI企業がテクノロジーについて大風呂敷を広げながらも、蓋を開けてみれば宣伝文句通りの性能が発揮されない例は少なくない。AIの訓練に使える関連データがほとんどないため、戦場はAIを導入するには技術的に極めて困難な場所の1つなのかもしれない。そのため、自律システムは「複雑かつ予測不可能な形」で失敗する可能性があると、ドローンなどの監視テクノロジーの専門家であるアーサー・ホランド・ミッチェルは、国連軍縮研究所(United Nations Institute for Disarmament Research)の報告書で主張している …

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