米国連邦最高裁判所は6月30日、米国環境保護庁(EPA: Environmental Protection Agency)が二酸化炭素やその他の温室効果ガス排出量を規制する権限を大きく制限する判決を出した。
最高裁判所は、中絶を認める画期的な決定である「ロー対ウェイド事件」判決を覆す判決を出して1週間も経たないうちに、「ウェストバージニア州対環境保護庁」の最新の判決を出した。世界が温室効果ガス排出量の新記録を更新し続けている中で、米国の気候政策に広範囲にわたる影響をもたらす可能性がある重大な判決だ。
どのような判決だったのか?
今回の判決で最高裁判所は、発電所からの排出量に上限を盛り込んだ2015年の規定に基づく環境保護庁の活動は、温室効果ガス排出量を規制する同庁の権限を逸脱していると述べている。
判決では、「石炭使用による発電から強制的に脱却させるレベルで二酸化炭素排出量を全国的に制限することは、賢明な『現在の危機への解決策』であるかもしれない」とする一方、「しかしながら、連邦議会がそのような規制体系を独自に取る権限を、環境保護庁に与えたことは妥当ではない」と述べられている。
そして、議会だけがそのような「重大性と結果を持つ決定」を下す権限を持つ、と続けている。
最高裁判所の一連の驚くべき判決の中で、今回の最新の判決は、多分にイデオロギーに従ったものだ。ジョン・ロバーツ最高裁長官が意見の大部分を書き、それに保守派のサミュエル・アリート判事、エイミー・コニー・バレット判事、ニール・ゴーサッチ判事、ブレット・カバナー判事、クラレンス・トーマス判事らが加わった。スティーブン・ブライヤー判事、エレナ・ケイガン判事、ソニア・ソトマイヨール判事は判決に反対している。
この判決にはどんな意味があるのか?
今回の訴訟の主な問題は、二酸化炭素排出を規制するために、環境保護庁がどれだけの権限を持つべきか、そして実際に排出量を減らすためにどんなことを実施するのが許されるべきか、ということだった。問題は、「クリーン・パワー・プラン(Clean Power Plan)」と呼ばれる、2015年に環境保護庁が定めた規則により提起された。
クリーン・パワー・プランは発電所からの温室効果ガス排出量を対象とする。各州に排出量を削減する計画を立てさせて、連邦政府に …