KADOKAWA Technology Review
×
環境保護庁の排ガス規制は越権、最高裁判断で米気候政策に暗雲
Richard Jopson/Camera Press/Redux
気候変動/エネルギー 無料会員限定
The US Supreme Court just gutted federal climate policy

環境保護庁の排ガス規制は越権、最高裁判断で米気候政策に暗雲

米国最高裁判所は6月30日、二酸化炭素排出量を規制する米国環境保護庁の権限を、大きく制限する判決を出した。気候変動が進む中で、米国の気候政策が後退する可能性がある。 by Casey Crownhart2022.07.11

米国連邦最高裁判所は6月30日、米国環境保護庁(EPA: Environmental Protection Agency)が二酸化炭素やその他の温室効果ガス排出量を規制する権限を大きく制限する判決を出した。

最高裁判所は、中絶を認める画期的な決定である「ロー対ウェイド事件」判決を覆す判決を出して1週間も経たないうちに、「ウェストバージニア州対環境保護庁」の最新の判決を出した。世界が温室効果ガス排出量の新記録を更新し続けている中で、米国の気候政策に広範囲にわたる影響をもたらす可能性がある重大な判決だ。

どのような判決だったのか?

今回の判決で最高裁判所は、発電所からの排出量に上限を盛り込んだ2015年の規定に基づく環境保護庁の活動は、温室効果ガス排出量を規制する同庁の権限を逸脱していると述べている。

判決では、「石炭使用による発電から強制的に脱却させるレベルで二酸化炭素排出量を全国的に制限することは、賢明な『現在の危機への解決策』であるかもしれない」とする一方、「しかしながら、連邦議会がそのような規制体系を独自に取る権限を、環境保護庁に与えたことは妥当ではない」と述べられている。

そして、議会だけがそのような「重大性と結果を持つ決定」を下す権限を持つ、と続けている。

最高裁判所の一連の驚くべき判決の中で、今回の最新の判決は、多分にイデオロギーに従ったものだ。ジョン・ロバーツ最高裁長官が意見の大部分を書き、それに保守派のサミュエル・アリート判事、エイミー・コニー・バレット判事、ニール・ゴーサッチ判事、ブレット・カバナー判事、クラレンス・トーマス判事らが加わった。スティーブン・ブライヤー判事、エレナ・ケイガン判事、ソニア・ソトマイヨール判事は判決に反対している。

この判決にはどんな意味があるのか?

今回の訴訟の主な問題は、二酸化炭素排出を規制するために、環境保護庁がどれだけの権限を持つべきか、そして実際に排出量を減らすためにどんなことを実施するのが許されるべきか、ということだった。問題は、「クリーン・パワー・プラン(Clean Power Plan)」と呼ばれる、2015年に環境保護庁が定めた規則により提起された。

クリーン・パワー・プランは発電所からの温室効果ガス排出量を対象とする。各州に排出量を削減する計画を立てさせて、連邦政府に …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. What’s on the table at this year’s UN climate conference トランプ再選ショック、開幕したCOP29の議論の行方は?
  2. This AI-generated Minecraft may represent the future of real-time video generation AIがリアルタイムで作り出す、驚きのマイクラ風生成動画
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る