ジェシカ・ブリルハートはシリコンバレーで最もクリエイティブな仕事といってもよい、グーグルの実質現実(VR)部門で主任映像制作者を務めている。VR映画の撮影用に設計された「ジャンプ」システム(16台のカメラを内蔵する円形の装置) で制作された初の映画 「ワールド・ツアー」等のVR体験と、従来型の映画(ブリルハートは「平面映画」と呼ぶ)を制作、さらにスマホと組み合わせて使うグーグル製の安価なVRゴーグル「カードボード」等、新しいVRテクノロジーの評価も担当している。以下は、ブリルハート主任映像制作者とMIT Technology Reviewのジェイソン・ポンティン編集長とのインタビュー内容の抜粋である。
グーグルでVRの主任映像制作者として何をしているのですか?
グーグルが開発しているテクノロジー、特にVRについて見ています。VRをどれだけクリエイティブにできるのか、自身に問いかけるのです。私がエンジニアとクリエイターの間を取り持ち、その過程によって作品を作っています。
実質現実との最初の出会いはいつでしたか?
あるとき、360°カメラを開発していたエンジニアのチームを訪ねてデモを見たのです。今ではよく見かける類のミュージシャンが360度の視界にいる映像ですが、私は「これはちょっと面白いな」と思ったのです。しかし、チームが戸惑い気味に見せてくれたデモはひとつだけでした。チームが撮影した初めての映像だったのです。オフィスにいた全エンジニアにとって、その装置を動かすのはそのときが初めてでした。チームはみんな幸せそうでした! 素っ頓狂な表情がとても可愛らしかった。最初、エンジニアはきょろきょろ辺りを見回してばかりいました。「ちゃんと動いてる?」「わからないよ!」みたいな様子です。そして突然、チームは両手を上げて大喜びしたのです。装置がうまく動作して本当に喜んでいたので、こちらまで嬉しくなってしまいました。それを見て、映像制作には本当に苦労があったのだろう、とわかりました。おそらく絶対に不可能なほどの苦労があったのでしょう。
VRはストーリーを見せることに直接的に役立ちますか?
私は、その質問にはかなり否定的です。ストーリーテリングを強調するのは正しくないと考えているのです。ストーリーテリングはメディアとしての映像製品です。1929年制作の実験映画『これがロシヤだ (Man with a Movie Camera)』で、ジガ・ベルトフ監督はカメラを手に、ありふれた光景を撮影し、妻とともにシーンを編集してつなぎ合わせる手法を生み出しま …