「がんが治る」フェイスブック広告はなぜなくならないか?
コネクティビティ

Facebook is bombarding cancer patients with ads for unproven treatments 「がんが治る」フェイスブック広告はなぜなくならないか?

メタ(フェイスブック)は医療に関する誤情報の規制ポリシーを打ち出しているが、相変わらず怪しげな広告であふれている。なぜこのような広告はなくならないのだろうか。 by Abby Ohlheiser2022.07.04

「がんで多くの人が亡くなります。しかし、希望はあります。『がんを死滅させる』ビタミンCベースの特許薬アパトン(Apatone)です。」という救いの手を差し伸べるかのような広告がある。この広告によると、アパトンの有効成分は米国食品医薬品局(FDA)未承認であり、未実証の治療法であるため米国では利用できない。アパトンを利用したいなら、メキシコのクリニックを訪れる必要がある。

米国在住のフェイスブックやインスタグラムのユーザーの中で、がん治療に興味があるとメタに判断された人なら、メキシコのCHIPSA(太平洋国際病院センター)が最近掲載したこの広告や、その他20件ほどの広告を目にしたことがあるかもしれない。米国との国境近くにあるCHIPSAが出したこのような広告はすべて、メタの広告ライブラリで公開されている。これは、がん患者をターゲットとして、誤解を招いたり虚偽の健康効果を主張したりするフェイスブック上で飛び交う広告の一例である。

フェイスブックやインスタグラムのユーザー、医療研究者、そしてメタの広告ライブラリから得た証拠によると、メタにはセンセーショナルな健康効果を謳った広告があふれており、同社はそこから直接利益を得ていることがわかる。誤解を招く広告は数カ月間、あるいは数年間、問題として取り上げられないまま流布される可能性がある。MITテクノロジーレビューが調査した広告の中には、場合によってはすぐに身体に害が及ぶことが証明されている治療法を宣伝するものもあった。その他にも、効果が疑わしい高額な治療法をユーザーに案内する広告もあった。

CHIPSAは1979年に設立され、がんの総合治療を提供する地域病院を自称している。フェイスブックでは、がん研究の「最先端」を行く施設と説明がある。しかし、この病院の根幹である「ゲルソン・プロトコル(Gerson Protocol)」と呼ばれる食事療法は「まったくのナンセンス」だと語るのは、ミシガン州ウェイン州立大学の腫瘍専門外科医で、Webサイト「サイエンスベースト・メディシン(Science-Based Medicine)」の編集長であるデビッド・ゴースキーだ。1920年代にドイツ人医師ゲルソンが片頭痛治療のために開発したこの治療法は、特殊な食事療法と頻繁な「デトックス」で構成されている。医学界では数十年も前からその効果は否定されている。

CHIPSAは、電話や電子メールによる再三のコメント要請にも応じなかった。

MITテクノロジーレビューはメタに対し、CHIPSAが掲載する5件の広告と、ヴェリタ・ライフ(Verita Life)という別の国際クリニックの3件の広告に注意を促す報告をした。これに対して、メタの広報責任者であるマーク・ランネバーガーから、「不治の病の治療を謳うことを禁止している当社の誤解を招く主張の方針に違反する広告を数件」削除したと返答があった。

削除した広告の特定を要請すると、アパトンががんを「死滅させる」と主張した広告と、米国の医療制度に対する「不信感の高まり」に触れながら特殊ながん治療を宣伝していた広告を拒否した、とランネバーガー広報責任者は説明した。後者の広告とまったく同じ文章で、異なる画像を使った別の広告は依然としてアクティブなままだ。

オーストラリアの医学生で急性骨髄性白血病を患っているニキール・オーターによると、「私のようながん患者やがんを克服した人たちは、常にこのような代替医療の宣伝攻勢を受けています」。オーターがフェイスブックでがん治療センターの広告を目にし始めたのは2019年のことだ。これは、フェイスブックや他のプラットフォームが、健康に関する誤情報の配信を制限するために作った新しいポリシーを展開し始めた時期と重なる。

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