米国が制裁を検討中、
知られざる監視カメラ企業
「ハイクビジョン」とは?
中国政府による新疆ウイグル自治区での人権侵害を支援したとして、世界最大の映像監視機器メーカー「ハイクビジョン」が米国による厳しい制裁を受けるかもしれない。ハイクビジョンとは何か、米国が考える国際的な制裁の可能性について解説する。 by Zeyi Yang2022.06.28
ハイクビジョン(Hikvision)の名前を聞いたことがなくても、あなたはすでに、この中国企業の数百万台のカメラのうちの1台に撮影されている可能性がある。ハイクビジョンの製品は、警察の監視システムから赤ちゃん用モニターまで、190カ国以上のあらゆる場所で目にすることができる。まずまずの品質の安価な製品を作る能力(および中国政府との関係)により、ハイクビジョンは世界最大の映像監視機器メーカーになった。
中国政府との密接な関係がハイクビジョンの成長を助けてきた一方で、今やその関係が破滅をもたらすかもしれない。同社は、中国の大規模な治安監視システムの構築に力を貸し、新疆ウイグル自治区でイスラム系少数民族を弾圧する目的に合わせてシステムを調整してきた。その結果、過去3年の間に米国政府から何度も制裁を受けている。報道によると、米国財務省は今年、通常は北朝鮮やイランのような国のために維持している「特別指定国民および資格停止者(SDN)」リストにハイクビジョンの追加を検討している。
SDNリストに載ると、世界中の誰もがハイクビジョンとの取り引きを禁じられる。これは現在、中国企業ファーウェイ(Huawei)に課されている制裁よりもはるかに厳しいものだ。制裁に従わない国や企業は、SDNリストに追加される危険性がある。現在使用されている数百万台のハイクビジョン製カメラを一晩で交換する必要はないものの、今後は販売できなくなる。「基本的には、ハイクビジョンがあっという間に、中国のローカル企業になってしまう可能性があります」と映像監視産業の業界誌「IPVM」でハイクビジョンを調査しているコナー・ヒーリーは言う。
創業21年のこの中国企業は、どのようにして世界的に有名になり、中国政府とどれほど緊密な関係にあるのか? 西側諸国の政府はなぜハイクビジョンを信用しなくなり、差し迫っている制裁はこの会社の将来にとって何を意味するのか? かつては無名だった会社が世界で最も厳しい制裁を受けるテック企業となる今、ハイクビジョンについて知っておくべきあらゆることをこの記事で解説する。
ハイクビジョンとは?
2001年に設立されたハイクビジョンは、9.11同時多発テロの後で起こったセキュリティ強化の流れに、絶好のタイミングで乗ることができた。当初は監視システムで使用されるビデオキャプチャー・カードの販売からスタートしたが、2007年に自社製のビデオカメラを発売した。現在では、ソフトウェアからハードウェアまでのあらゆるものを、たいていは海外の競合他社よりもはるかに安い価格で販売している。
ハイクビジョンを設立したチームの多くの人は、民間用と軍事用両方の電子製品を製造する国有企業、中国電子科技集団公司(CETC)のエンジニアだった。2008年に同社は株式の48%をCETCに譲渡し、正式に中国政府の傘下に入った。
多くの国と同様に、ハイクビジョンの最大の顧客は監視を進める中国政府である。バックに国がついていることが助けとなり、同社はすぐに地方政府から大小の契約を獲得し始め、治安維持システムや交通管制システムを構築した。最も注目されたのは、中国の治安維持プロジェクト「スカイネット(Skynet)」と「シャープアイズ(Sharp Eyes)」で重要な一翼を担ったことだ。これらのプロジェクトは、すべての道路にカメラを設置して、市民を監視することが目的だ。例えば、ハイクビジョンは2018年に、中国の西安市で4万5000台のカメラを新規設置または既存カメラの入れ替えで1億2500万ドルの契約を獲得した。そのうちの1万6000台には、人物検出機能や顔認識機能を搭載する必要があった。
その一方で、ハイクビジョンは当初から世界進出 …
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