使い途がわからないほどお金を持て余している人は、最後には「老化」を治療しようとする。グーグル創業者のラリー・ペイジ、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス、テック系億万長者のピーター・ティールやラリー・エリソンもそうだった。
そして今、彼らの総資産をも上回る豊富な資金を持つサウジアラビア王室が、老化治療に挑もうとしている。
サウジアラビア王室は、非営利団体「ヘボリューション財団(Hevolution Foundation)」を設立した。石油によって生み出された富から最大で年間10億ドルを財団に注ぎ込み、老化に関する生物学の基礎研究、人々が健康に生きられる「健康寿命」を延ばす方法の開発を支援する計画だ。
実際に10億ドル全額が支出されることになれば、老化メカニズムの根本的な理解や、医薬品による老化の先延ばしについて研究している研究者にとって、サウジアラビアは最大の単独スポンサーになるかもしれない。
ヘボリューション財団はまだ正式に発表していないが、米国老化協会(American Aging Association)の年次会議で取り組みの概要が示され、同分野の研究者たちはこの話題で持ちきりとなっている。研究者らは抗老化医薬品の可能性を探る大規模な臨床研究を、同財団が支援することを望んでいる。
ヘボリューション財団を運営するのは、元メイヨー・クリニック(Mayo Clinic)の内分泌科医で、ペプシコの主任科学者を務め、2008年には最高科学責任者(CSO)に就任したメームード・カーンだ。「私たちの第一の目標は、健康寿命を延ばすことです」とカーン理事長はインタビューで話した。「地球上で、これほど大きな医学的問題はありません」。
一部の長寿科学者の間では、身体の老化を先延ばしできれば、多くの疾患の発症が遅れ、人々が健康に年を取れる年数を延ばせるという考え方が一般的だ。カーン理事長によれば、ヘボリューション財団は他の財団と同様に、老化の原因に関する基礎的な科学研究に対して助成金を交付する予定だが、さらに一歩進んで、「特許が切れているか、商業化されていない治療法」の治験を含む、医薬品研究の支援も計画している。
「生物学の基礎研究を応用し、ヒト臨床研究まで進む必要があります。結局のところ、実際に患者の利益になるものが市場に出て来なければ、何も変わりません」(カーン理事長)。
カーン理事長によれば、ヘボリューション財団は年間10億ドルを上限として、無制限に支出することが認められているという。これに対し、老化生物学の基礎研究を支援する米国立老化研究所(US National Institute on Aging)の担当部門予算は年間約3億2500万ドルだ。
ヘボリューション財団は今のところ、支援予定のプロジェクトを発表していない。しかし、関係筋によると、Xプライズ(X Prize)主催の若返りテクノロジーに関するコンペへの1億ドルの資金提供を検討しており、数千人の高齢者を対象とした糖尿病治療薬メトホルミンの試験に関しては資金援助の仮契約に達しているという。
「TAME(Targeting Aging with Metformin:メトホルミンによる老化対策)」と呼ばれるこの治験は、人間の老化を先延ばしする医薬品において最初の主 …