KADOKAWA Technology Review
×
エネルギー密度2倍へ、EV用全固体電池ベンチャーがパイロット生産
Chet Strange/Solid Power Battery
気候変動/エネルギー 無料会員限定
This startup wants to pack more energy into electric vehicle batteries

エネルギー密度2倍へ、EV用全固体電池ベンチャーがパイロット生産

米国のスタートアップ企業「ソリッド・パワー」は、全固体電池のパイロット生産ラインを立ち上げた。実現すれば、エネルギー密度を倍近くまで高めることができ、電気自動車の航続距離を大幅に伸ばせる可能性があるという。 by Casey Crownhart2022.06.09

電気自動車の人気は高まっているが、航続距離にはまだ限界がある。テスラ(Tesla)の「モデル 3」の場合、1回の充電でおよそ560キロメートルしか走れない。そして市場の大半を占めるリチウムイオン電池は、安全性に懸念が残っている。

脱炭素イノベーション
この記事はマガジン「脱炭素イノベーション」に収録されています。 マガジンの紹介

もっと安全かつ長距離を走れる電気自動車向けの電池を作るため、スタートアップ企業のソリッド・パワー(Solid Power)は、より小さなスペースに多くのエネルギーを詰め込める全固体電池の製造に取り組んでいる。

ソリッド・パワーは、リチウムイオン電池の電解質に使われている液体をセラミック層に置き換えた電池を製造する大規模なパイロット生産ラインを立ち上げ、自動車でテストする第一歩を踏み出した。パイロット生産ラインで生産されるフルサイズの電池は小型のノートPCとほどの大きさで、最終的に電気自動車に搭載されるものと同じ大きさとなる。

この全固体電池テクノロジーの商用化はまだ数年先の話だが、ソリッド・パワーは2028年までに年間・自動車80万台分の材料を生産できるよう計画している。実用化できれば、電気自動車の性能を大幅に向上できる可能性がある。

ただしソリッド・パワーには、完成した全固体電池を製造販売する計画はない。その代わり、固体電解質を材料として他の電池メーカーに供給する予定だ、とダグ・キャンベル最高経営責任者(CEO)は話す。

電解質は、充電や放電の際に電池内の電荷を移動させる役割を果たす。現在、電気自動車に搭載されているリチウムイオン電池の電解質は液体だ。固体電池では、電解質の固体層が電池の他 …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. How a top Chinese AI model overcame US sanctions 米制裁で磨かれた中国AI「DeepSeek-R1」、逆説の革新
  2. Why the next energy race is for underground hydrogen 水素は「掘る」時代に? 地下水素は地球を救うか
  3. OpenAI has created an AI model for longevity science オープンAI、「GPT-4b micro」で科学分野に参入へ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る