バイオ燃料で製鉄業界の排出量を削減、障壁は?
チャーム・インダストリアルは、バイオ燃料油から得た合成ガスを使うことで、製鉄業界の二酸化炭素排出量を大幅に削減できると考えている。しかし、それを実現させるには越えなければならない大きな壁がいくつかある。 by James Temple2022.05.31
チャーム・インダストリアル(Charm Industrial)は、二酸化炭素を貯蔵する一風変わった方法で注目を集めている。植物からバイオ燃料油を作り、それを深井戸や岩塩空洞に圧入するのだ(関連記事を参照)。
- この記事はマガジン「脱炭素イノベーション」に収録されています。 マガジンの紹介
サンフランシスコに拠点を置くスタートアップ企業である同社は現在、バイオ燃料油を製鉄や製鋼による排出ガスの削減にも利用できるかどうかを検討しており、もっとも排出ガスの多い産業部門を浄化するための新たな技術的方法を追求している。
国際エネルギー機関(IEA)の2020年の報告書によると、鉄鋼産業の二酸化炭素排出量は毎年約40億トンであり、これはエネルギーに関連する気候汚染全体の約10%を占めている。この数字は、中国などの急速な経済成長によって、今世紀に入って急増している。
カナダや欧州連合を含む一部の地域では、大量の排出ガスと厳しさを増す気候政策によって、一部の企業は現代社会に不可欠な鉄鋼をよりクリーンな方法で生産することを余儀なくされ始めている。
スウェーデンの合弁会社ハイブリット(Hybrit)は昨年、ボルボ(Volvo)に初めてグリーンスチールの商業ロットを納入した。鉄鋼大手のスウェーデンSSAB、同じくスウェーデンの電力会社ヴァッテンフォール(Vattenfall)、採掘会社のスウェーデンLKABの3社による提携では、石炭とコークスの代わりにカーボンフリーの水素を利用する製造方法が採用された。このほかにも、二酸化炭素を回収する装置を備えた施設の利用を検討している企業や、ボストン・メタル(Boston Metal)のようにまったく別の電気化学的手法を導入している企業もある。
チャーム・インダストリアルはさらに別の方法も検討している。倉庫の奥にある、改質装置と呼ばれる細い金属製の装置で、バイオ燃料油を高温の蒸気と酸素で反応させているのだ。それによって、合成ガス(シンガス)と呼ばれる、おもに一酸化炭素と水素の混合ガスが発生する。
それを鉄鋼の生産方法の一つに置き換えられる可能性がある。
もっとも一般的な鉄鋼の生産は、鉄鉱石と石灰石と、石炭の一種であるコークスを、高炉で1500℃以上に加熱するところから始まる。生成された炭素を含む金属 …
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