ソーラー(太陽電池)パネルと言えば、基本的にはシリコンのことだ。シリコンは現在販売されているソーラーパネルの約95%で使用されている。しかし、シリコン太陽電池が太陽光をエネルギーに変換する能力に限りがあり、また製造コストも比較的高い。
そこで、より安く、軽く、効率の良いソーラーパネルの材料になるのではないかと期待されてきたのが、ペロブスカイト(灰チタン石)という化合物だった。しかし、高い期待と、このテクノロジーの商品化に向けたスタートアップ企業のにわかな急増にもかかわらず、ペロブスカイトをベースとした太陽電池ができたとしても市場に大きなインパクトを与えるのは10年近く先になるのではないか、と一部の専門家は警鐘を鳴らしている。
ペロブスカイト電池に関する最近の研究では、効率などの重要な指標には進歩が見られるものの、実使用環境での安定性はまだかなり低いと言っていい。
オーストラリアのニューサウスウェールズ大学で太陽光発電用材料を研究するマーティン・グリーン教授は、「ペロブスカイトのコミュニティは全体的に、すぐにも商品化できるという誤解を招く印象を与えているのではないかと思います」と言う。
太陽光を効率的に吸収する合成物質の1つとして知られるペロブスカイトは、比較的簡単な表面のコーティングに使うことで、太陽光エネルギーを電気に変換する安価な太陽電池を作れる。
研究者が太陽光発電用材料を評価する指標ではシリコンが先行しているものの、ペロブスカイトも急速に追い上げている。特に、太陽エネルギーをどれだけ電気に変換できるかという効率においては顕著だ。シリコンもペロブスカイトも、最近になって変換効率25%以上という記録を打ち立てた。
ペロブスカイトに関する研究が急速に進んだことで、実用化を目論む多くの研究者が殺到した。 …