KADOKAWA Technology Review
×
主張:自動運転車は街に溶け込むべきか?ルールが必要な理由
AP Photo/Gene J. Puskar
ニュース 無料会員限定
It will soon be easy for self-driving cars to hide in plain sight. We shouldn't let them.

主張:自動運転車は街に溶け込むべきか?ルールが必要な理由

大手テック企業や自動車メーカーが完全な自律自動車の実用化へ向けた実験を進めている。もし自動運転車が実際に道路を走るなら、他のドライバーはその実態について知る必要がある。 by Jack Stilgoe2022.05.17

ある動画が先月、ネット上で話題になった。動画にはサンフランシスコの警察官が、夜間にもかかわらずヘッドライトを点灯していない車を停止させる様子が映っていた。ただし、これは普通の車ではなかった。警察官が車に近づくと、画面外から誰かが 「誰も乗ってないぞ!」と叫んだ。この車はゼネラルモーターズの子会社であるクルーズ(Cruise)の車で、完全にもぬけの殻だったのだ。警察官が同僚の方を振り向くと同時にロボタクシーは発進し、交差点を横切って停車した。その後2分間にわたって映し出されていたのは、警察官が車の周りをうろうろしながら、どうすればいいのか考えている様子だった。

警察官が混乱する様子は確かに見物だった。ほんの10年前までは魔法のように思えたものが、日常の中に現れたのだから。だが、自動運転車が普及するにつれ、誰が運転しているのかをどう判断するのか? という問題はますます重要になるだろう。

近い将来、自動運転車は日常に簡単に溶け込むようになる。現在多くの自動運転車の目印となっている、屋根に搭載されたライダー(LiDAR:レーザーによる画像検出・測距)センサーは、今後さらに小型化される可能性が高い。メルセデス車には、一部自動化された新型ドライブ・パイロットシステムが搭載されており、ライダーセンサーは車のフロントグリルの裏にある。すでに肉眼では、普通の人間が運転する車と見分けがつかないほどだ。

これは良いことなのだろうか? 私はユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの「Driverless Futures(ドライバーのいない未来)」プロジェクトの一環として、同僚たちと共同で、自動運転車と交通ルールに対する市民の意識調査を実施した。英国市民4800人を対象にした、最大かつ最も広範囲にわたる調査である。専門家への50回以上の綿密なインタビューを経て選んだ問いの1つが、「自律走行車に表示を付けるべきか」というものだった。調査での民意は明らかで、回答者の87%が「自動運転車が走行している時は、他の道路利用者にも分かるようにしなければならない」という意見に「そう思う」と答えた(「そう思わない」と答えたのはわずか4%で、残りは「分からない」と答えた)。

同じアンケートを、より小規模な専門家グループにも送った。専門家の意見は割れ、44%が「そう思う」と回答した一方で、28%が自動運転車であることを示すことに反対した。問題は単純ではない。どちらの主張にも正当性があるのだ。

まず、原則として言えることは、ロボットと関わるのであれば、人間にはその事実を知る権利がある。これは2017年に持ち出された議論で、英 …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. What’s on the table at this year’s UN climate conference トランプ再選ショック、開幕したCOP29の議論の行方は?
  2. This AI-generated Minecraft may represent the future of real-time video generation AIがリアルタイムで作り出す、驚きのマイクラ風生成動画
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る