パユ・ハリスは、自分の祖母のために暗号通貨を作りたいと考えていた。彼が言うに、すべてのおばあちゃんや、ラコタ(スー)族の居留区に住む先住民の人々のためにそうしたいと考えている。特に、米国サウスダコタ州のパイン・リッジ・インディアン居留地の郊外に住んでいて、電気もインターネットもほとんど使えない貧しい人々のためだという。ハリスは、自分が発案した暗号通貨「マザコイン(MazaCoin)」は、祖母が毎日使えば成功と言えるだろうと主張する。これが実現可能性が低いように思えるのであれば、実際そうだ。実際、マザコインは、ハリスが発案してからずっと、浮き沈みを繰り返してきた。しかし、10年経った今、ハリスの夢は、当初より少し複雑になったとはいえ、より明確なものとなっている。
ハリスが友人から初めてビットコインについて聞いたのは、パイン・リッジ近くのショッピングモールで働いていたときのことだ。それからハリスは、日中はノートPCを立ち上げっぱなしにしてビットコインを採掘し、タバコを吸う合間に取引をチェックしていた。他の多くの暗号資産マニアと同じように、ハリスはビットコインの誇大宣伝にますますのめり込み、休日にはコーディングを学んだり、暗号通貨のホワイトペーパーを読んだりしていた。そしてやがて、「アノニマス・パイレート(AnonymousPirate)」というペンネームで知られるプログラマーとともに、ラコタ民族の亜族であるオグララ・スー族のためのデジタル通貨の取り組みである「オヤテ・イニシアチブ(Oyate Initiative)」を立ち上げた。ハリスは、部族の居留地に自立した経済を提供しようと熱心に取り組んだ。
2013年のフォーブス誌に掲載された記事の中で、ハリスはオヤテ・イニシアチブを 「ナード(おたく)の復讐」と呼んでいる。100年以上前のウーンデッド・ニー虐殺事件により荒廃したラコタ族などの先住民グループは、居留地制度の初期から、独自の先住民通貨を構築 …