米国のバラク・オバマ大統領は、カナダのジャスティン・トルドー首相とメキシコのエンリケ・ペーニャ・ニエト大統領と、今週オタワで開かれる「3人のアミーゴ」サミットで、野心的なクリーンエネルギー目標を発表すると見られている。ホワイトハウスの発表によれば、3カ国の首脳は、2025年までに、昨年12月のパリ気候協定で設定した排出削減目標をはるかに超える北米の電力の半を二酸化炭素を排出しないエネルギー源でまかなう目標を設定すると見られる。
カナダには簡単な目標だ。カナダはすでに80%以上を水力、太陽光、風力、原子力などのクリーンエネルギーでまかなっている。しかしメキシコとアメリカには難しい。メキシコは約4分の1の電力しかクリーンエネルギー化しておらず、米国は3分の1に過ぎない。両国がクリーンエネルギーに含める原子力発電所の増設は難しい状況だ。
たとえば、米国は現在約20%の電力を原子力発電で供給しているが、電力会社は近年、カリフォルニア州のディアブロ・キャニオン原子力発電所など、大規模な原子力発電所を閉鎖したり、閉鎖の計画を発表したりしている。原子力エネルギー研究所によれば、あと10年で20カ所もの原子力発電所が閉鎖されるかもしれない。
原子力発電の不足を化石燃料で置き換えると温室効果ガスの排出が劇的に増加してしまう。クリーンエネルギー50%の目標を達成するには、原子力発電所を増設する必要があるが、電力業界は消極的だ。
もちろん、オバマ政権が「困難」と認める目標を達成するかどうかは、7カ月後に就任する次期大統領が決める。ヒラリー・クリントン候補は、大統領に選ばれたら再生可能エネルギーを増やす広範的な計画を発表しているが、クリントン候補は原子力が米国のエネルギーミックスの一部を占めるべきかどうかについて数年間に態度を二転三転させてきた。最近になって、クリントン候補の「クリーンエネルギー・チャレンジ」には新規原発建設への補助金が含まれると発言している。
ドナルド・トランプ候補は、原子力を支援すると発言してきたが、トランプ候補の「アメリカ・ファースト」エネルギー計画は、化石燃料の増産と環境規制の緩和に主眼を置いている。ノースダコタ州で5月にあった1時間の演説でエネルギー政策を発表すると予告していたが、実際には原子力に言及したのは一箇所だけだった。