米連邦検察当局は2022年1月14日、マサチューセッツ工科大学(MIT)のナノテクノロジー分野の教授を務めるチェン・ガン(陳剛)に対する3つの起訴すべてを取り上げるよう米国司法省に勧告した。これにより、チェン教授の2年間の試練に終止符が打たれた。
チェン教授の容疑は、中国企業から資金提供を受けていたことを米国の助成金開示書類に記載しなかったとの虚偽申告だ。チェン教授はすべての容疑に対して無実を主張し、雇用主であるMITは、虚偽申告の容疑がかけられている中国からの資金はチェン教授個人ではなく、大学側へ提供されたものであると主張していた。MITはチェン教授の弁護士費用を負担している。大学側は、係争中の裁判についてのコメントを控えた(MITテクノロジーレビューはMITから資金提供を受けているが、編集上は独立している)。
チェン教授は、2018年に開始された米国連邦政府の取り組みである「チャイナ・イニシアチブ(China Initiative)」の下で起訴された著名な研究者の一人である。チャイナ・イニシアチブは、中国による経済スパイ活動や国家安全保障上の脅威に対抗することが本来の目的であるにもかかわらず、MITテクノロジーレビューの調査によると、企業秘密の窃盗よりもチェン教授のような「研究の公正性」に関する違反に焦点を当てている事例が増えていることが判明した。
取り下げの申し立てはまだなされておらず、最終承認は裁判官に委ねられている。MITテクノロジーレビューのデータベースによると、研究の公正性に関する起訴が裁判前に取り下げられたのは、チェン教授の裁判が8件目となる。また、テネシー大学ノックスビル校のナノテクノロジー分野の学者であるアンミン・フー准教授に対する研究の公正性に関する裁判は、評決不能となった後、すべての容疑が解かれた。チャイナ・イニシアチブの研究公正性に関する起訴のうち、陪審員の前での審理が実施されたのは、2021年12月に、虚偽報告と所得税申告虚偽の6つの容疑で有罪となったチャールズ・リーバー教授の裁判だけである(研究の公正性に関する全ての起訴はここから閲覧できる)。
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