「日本独自の量子コンピューターで革新的な社会を」東大 武田俊太郎
MITテクノロジーレビュー主催の「Innovators Under 35 Japan Summit 2021」から、東京大学大学院の武田俊太郎氏のプレゼンテーションの内容を要約して紹介する。 by Koichi Motoda2022.01.07
MITテクノロジーレビューは2021年12月16日、「Innovators Under 35 Japan Summit 2021」を開催した。Innovators Under 35は、世界的な課題解決に取り組む若きイノベーターの発掘、支援を目的とするアワード。昨年に続き2 回目の開催となる本年度は、35歳未満の起業家や研究者、活動家など15名のイノベーターを選出した。
その受賞者が集う本サミットでは、各受賞者が自らの取り組みへ対する思いや、今後の抱負を3分間で語った。プレゼンテーションの内容を要約して紹介する。
武田俊太郎(東京大学大学院)
私は光の粒である光子を使う、オリジナルのアプローチで量子コンピューターの開発に取り込んでいます。光を活用した量子コンピュータは巨大で複雑な光回路が必要となり、大規模化が難しいとされていました。しかし、私は2017年にこれを覆すアイデアを見つけました。光を活用した量子コンピュータが実現できれば、私たちの世界を大きく変えてくれます。
量子コンピューターを使うと、よりエネルギーを効率よく変換してくれる太陽光パネルの製造や、工場の生産プロセスにおいてエネルギー消費を大きく削減できるといった未来が想像できます。すなわち、私たちが直面している地球温暖化の問題に、具体的な解決策を示してくれるキーテクノロジーとなる可能性があるのです。さらに、光を活用した量子コンピューターならば、そのまま光を使って通信できるという非常に大きな意味を持ちます。
今、まさに世界はオンライン化に大きく舵をとっていて、オンライン医療、教育そしてリモートワークなど、通信の重要性が日に日に増しています。そういった中、私が研究している技術は量子インターネットの世界において、通信が安全安心に高機能で提供される未来までも描いてくれる可能性があると思っています。まだ基礎研究の段階ではありますが、日本オリジナルのアプローチを使って、より新しい革新的な社会を作っていきたいと考えています。
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- サイエンスライター。日本ソフトバンク(現ソフトバンク)でソフトウェアのマニュアル制作に携わった後、理工学系出版社オーム社にて書籍の編集、月刊誌の取材・執筆の経験を積む。現在、ICTからエレクトロニクス、AI、ロボット、地球環境、素粒子物理学まで、幅広い分野で「難しい専門知識をだれでもが理解できるように解説するエキスパート」として活躍。