「宇宙でのラストマイル輸送を実現したい」北大 ケンプス・ランドン
MITテクノロジーレビュー主催の「Innovators Under 35 Japan Summit 2021」から、北海道大学大学院のケンプス・ランドン氏のプレゼンテーションの内容を要約して紹介する。 by Koichi Motoda2022.01.05
MITテクノロジーレビューは2021年12月16日、「Innovators Under 35 Japan Summit 2021」を開催した。Innovators Under 35は、世界的な課題解決に取り組む若きイノベーターの発掘、支援を目的とするアワード。昨年に続き2 回目の開催となる本年度は、35歳未満の起業家や研究者、活動家など15名のイノベーターを選出した。
その受賞者が集う本サミットでは、各受賞者が自らの取り組みへ対する思いや、今後の抱負を3分間で語った。プレゼンテーションの内容を要約して紹介する。
ケンプス・ランドン(北海道大学大学院/Letara:レタラ)
2012年に米軍の情報官としてアフガニスタンに派遣されていた時、周りに何もないにもかかわらず、人工衛星インフラのおかげでインターネットが使えました。この経験で宇宙インフラの可能性に気がつき、職を辞して大学院で勉強したのですが、そこでは人工衛星の打ち上げや地球周回軌道に大きな制約があることを知りました。現在使われている推進系は非常に危険であるため、世界中の研究者がプラスチックなどを燃料とする、安全なハイブリッドの推進系に取り組んでいます。
私はこれまでの7年間、北海道大学の永田晴紀教授の研究室で学び、長時間燃焼や再点火など複数の技術を開発しながら、ハイブリッド推進の技術レベルを高めるために頑張ってきました。ハイブリッド推進技術は、宇宙ハブから目的地へ向かうラストマイル輸送実現のキーになると考えています。宇宙でラストマイル輸送ができるようになれば、SFの世界のように大量の人やものが宇宙を自由に行き交うようになるでしょう。
宇宙に行くことや宇宙で移動することには、どのような価値があるのでしょうか。私が感銘を受けた言葉をヒントに考えてみてください。「世界のリーダーは宇宙飛行士が見たものを見れば、異なる決定を下すだろう。月面から地球を見ると、国際政治はとてもくだらないものに見えるだろう」。この言葉を、各国の政治家に聞かせてみたいと思っています。
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- 元田光一 [Koichi Motoda]日本版 ライター
- サイエンスライター。日本ソフトバンク(現ソフトバンク)でソフトウェアのマニュアル制作に携わった後、理工学系出版社オーム社にて書籍の編集、月刊誌の取材・執筆の経験を積む。現在、ICTからエレクトロニクス、AI、ロボット、地球環境、素粒子物理学まで、幅広い分野で「難しい専門知識をだれでもが理解できるように解説するエキスパート」として活躍。