「分散技術を人類普遍の技術に」トレジャーデータ 古橋貞之
MITテクノロジーレビュー主催の「Innovators Under 35 Japan Summit 2021」から、トレジャーデータの古橋貞之氏のプレゼンテーションの内容を要約して紹介する。 by Koichi Motoda2022.01.04
MITテクノロジーレビューは2021年12月16日、「Innovators Under 35 Japan Summit 2021」を開催した。Innovators Under 35は、世界的な課題解決に取り組む若きイノベーターの発掘、支援を目的とするアワード。昨年に続き2 回目の開催となる本年度は、35歳未満の起業家や研究者、活動家など15名のイノベーターを選出した。
その受賞者が集う本サミットでは、各受賞者が自らの取り組みへ対する思いや、今後の抱負を3分間で語った。プレゼンテーションの内容を要約して紹介する。
古橋貞之(トレジャーデータ)
グーグルやアマゾン、フェイスブック、アップルといった巨大IT企業がデータを独占していると言われています。「いや、そんなはずはない」という思いから、私たちの歩みは始まりました。私が最初に開発したのは、1秒間に200万件ものデータを新たに保存する、分散型データベースソフトです。現在、30ペタバイトを超える顧客データを扱っており、これらのデータを活用するさまざまなソフトウェアを設計して、トレジャーデータのサービスとして提供しています。
さらに、さまざまなシステムあるいはデバイスからデータを収集する、「フルエントディー(Fluentd)」というオープンソースソフトを開発しました。世界中から開発に参加した人たちによって、種々のプラグインが開発され、多種多様なデータを収集できるようになりました。他にも、モバイルデバイスとクラウド、あるいはモバイルデバイスとIoTデバイスというように、異種混合の環境でも効率的にメッセージ交換できる「メッセージパック(MessagePack)」というオープンソースソフトも開発しました。
私が作るソフトウェアでは、スケーラビリティを重視しています。それは、エコシステムこそがイノベーションの源泉だと考えているからです。分散技術はまだまだ発展途上ですが、投資のリターンが見込める分野でもあります。これからも分散技術を発展させ、人類普遍の技術にすべく研究開発を進めていきたいと思っています。
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- 元田光一 [Koichi Motoda]日本版 ライター
- サイエンスライター。日本ソフトバンク(現ソフトバンク)でソフトウェアのマニュアル制作に携わった後、理工学系出版社オーム社にて書籍の編集、月刊誌の取材・執筆の経験を積む。現在、ICTからエレクトロニクス、AI、ロボット、地球環境、素粒子物理学まで、幅広い分野で「難しい専門知識をだれでもが理解できるように解説するエキスパート」として活躍。