シリコンバレー企業は
ハッシュ関数でテロと闘う
対テロ戦争の働きに欠けていると言われてきたシリコンバレー企業が、オバマ政権に協力している可能性がある by Jamie Condliffe2016.06.27
グーグルとフェイスブックはテロリストによる過激な動画をウェブサイトから自動除去し始めた。グーグルもフェイスブックも公式発表はしていないが、情報筋がロイターに、著作物を識別してインターネットから取り除くのと似たテクノロジーを使っている、と伝えたという。
グーグルとフェイスブックがコンテンツの削除に使っているのは「ハッシュ関数」と呼ばれるアルゴリズムだ。ハッシュ関数は、動画からDNA情報まで、どんな長さのデータでも固定長のユニークな値に変換する数学的方法のこと。動画ファイルでもDNAでも、元の情報が同じなら数十から数百バイト程度の同じハッシュ値が割り当てられるので、コンピューターはファイルすべてを比較せずに、異同を検出できる。
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従来から、YouTubeやドロップボックスはハッシュ関数で著作権保護されたファイルを検出していた。著作権者が保護したい著作物のハッシュ値をウェブサイトの運営者に伝えておけば、サーバーにアップロードされたファイルから、同じハッシュを持つファイルを取り除ける。ロイターによると、フェイスブックとYouTubeは、同じ方法でサイトに何度も投稿されるテロリストの動画をブロックしている。
ただし、こうした動画をどう特定しているかは不明だ。ユーザーが報告する場合もあるだろうが、グーグルとフェイスブックが動画を広範囲に探索して過激な内容を含む投稿を確認するために、どれだけの人数を雇っているかは不明だ。また、動画を探索し、好ましくない場面を特定するために、どの程度プロセスが自動化されているかもわからない。記事の執筆時点で、グーグルもフェイスブックもコメントを回答していない。
テロリスト動画の規制は、政治家がシリコンバレーにテロとの戦いを支援する要請を強める中で始まった。2015年、民主党のヒラリー・クリントン候補はテクノロジー企業にオンライン上でイスラム国(ISIS)を妨害をするよう求めたが、最近では、フェイスブック、ツイッター、マイクロソフト、リンクトイン、YouTube(グーグル)、アップルの上級役員に、オバマ政権の担当者が面会し、どうすれば「テロリストがインターネットを使ってフォロワーたちを勧誘し、先鋭化させ、暴力に動員するのを難しくできるか」の構想を練ったという。クリントン候補は6月、大統領になったら「大手テクノロジー企業と共同して(中略)イスラム国の通信を傍受し、ソーシャルメディアへの投稿を追跡・分析し、イスラム聖戦士のネットワークを図式化する作業をもっと効率化する」と繰り返した。
フェイスブックとグーグルに、個々のユーザーを詳細に把握するための十分なデータがあるのは確かであり、データのパターンを特定してテロリストの脅威を見つけ出すためにも使えるはずだと、クリントン候補は主張する。繰り返し投稿される動画の除去はテロ活動の発見とは異なるが、シリコンバレーがアメリカ政府の要望に気を使うようになった兆候ともいえる。
関連ページ
- Reuters
- “What Google and Facebook Can Do to Fight ISIS”
- “What Role Should Silicon Valley Play in Fighting Terrorism?”
- “Can a Social-Media Algorithm Predict a Terror Attack?”
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- ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
- MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。