KADOKAWA Technology Review
×
22年の仕事始めに試したい
デジタル生活8つの行動
Ms Tech | Getty
Have a better 2022 with these tech resolutions

22年の仕事始めに試したい
デジタル生活8つの行動

現在の私たちの生活は善かれ悪しかれ、デジタルテクノロジーの影響を大きく受けている。あなたの生活を少しばかり楽しく、安全で、有意義にしてくれる新年の8つの抱負を紹介しよう。 by Tanya Basu2022.01.05

世界中の人々は年末になると、毎年決まったように、気持ちも新たに新年の抱負を立てる。その内容は、ダイエットや瞑想、節約などさまざまだ。

もしかしたら今年は、あなたのテクノロジー生活を吟味する年であるかもしれない。あなたは、ストレージが一杯になったとのしつこい通知を受け取ってはいないだろうか。あるいは、絶え間なく届く山のようなニュース速報のストレスから単に解放されたいと思っていないだろうか。

2022年に取り入れることをおすすめする、デジタル面の抱負をいくつか紹介しよう。うまくいけば、あなたの生活を少しばかり楽しく、安全で、さらにはより有意義なものにしてくれるだろう。

1.多要素認証(MFA)を今すぐ導入する
二段階認証は面倒なものだ。メールやメッセージで送られてくる意味不明でランダムな数字の羅列を入力せずに、パスワードだけでログインしたいと思ったことは誰しもあるはずだ。しかし、MITテクノロジーレビューのサイバーセキュリティ担当上級編集であるパトリック・ハウエル・オニールによると、オンラインアカウントの保護に興味がある人には、多要素認証に切り替えることを一番におすすめするとのことだ。「あらゆる重要なアカウントのオンライン・セキュリティを飛躍的に向上させる最も簡単な方法です」とパトリックは言う。ランサムウェア攻撃やハッキングがかつてなく多発した1年を経験した後なら、ためらうことは無いはずだ。

幸いなことに、多要素認証の追加は、これまでほど面倒なものではなくなっている。「方法はプラットフォームによっても異なりますが、一般的に、最も重要なアカウント(例えば、電子メール、ソーシャルメディア、金融など)のアカウント設定にアクセスし、指示に従えば追加できます」とパトリックは説明する。それだけで完了だ。電子メールやSMSによる認証は、足掛かりとしては最適なオプションだろう。セキュリティをさらに強化したい場合は、グーグル認証システムなどの認証アプリや、ユビキー(YubiKey)などの認証デバイスの利用を検討するのもひとつの手だ。

多要素認証を導入すれば、はるかに安心できる。「たった数分の作業で、90%以上の攻撃を効果的に防ぐことができることが研究で示されています」とパトリックは言う。

2.アマゾンの翌々日配送を見直す
ツイッター上で12月上旬、テック面での抱負を募集したところ、多くの人が「アマゾンプライムを退会すること」と回答した。ある人は環境への負荷を削減したいと言い、ある人は創業者ジェフ・ベゾスの宇宙征服に資金を提供したくないと言い、さらにある人は中小企業を支援したいと言った。

著述家のエム・カッセルは、2021年の初頭に思い切ってアマゾンを使うのをやめた。カッセルは、この決断について記したヴァイス(Vice)の記事の中で、「物事が少しだけ不便になった」と述べている。しかし、そのおかげで、これまで手を伸ばそうとは思いもしなかったさまざまなビジネスに目を向けることができるようになったという。家庭用品や事務用品が欲しい時にはエッツイー(Etsy)がとても便利だと気づいたし、書籍やメディアについては個人経営の書店を支援するブックショップ(Bookshop)を利用したり、出版社から直接購入したりするようになった。さらに、黒人オーナーによる個人経営事業を支援するマーケットプレイスBlk + Grnや、中古品を扱うデポップ(Depop)のような、自分の倫理観にあった企業やサイトを見い出すことができた。

カッセルは、誰もが簡単にアマゾンをやめられるとは考えていない。しかし、カートに入れる前に一呼吸置いて、その商品が本当に2日後に届く必要があるのかどうか自問することを勧めている。「それは鍛える必要のある筋肉のようなものです」とカッセルは言う。「しかし、アマゾンが無かった時代でも、人々は生き延びていました」。

3.次回の会議は音声だけにする
パンデミックによって私たちは、いつでもどこでも会議ができる柔軟性を手に入れたが、すべての会議でお互いの顔が見えている必要はないはずだ。

昨年(2021年)初めに私は、ビデオチャットを減らして、なるべく電話をかけるようにしようと決意した。ズーム(Zoom)を使わざるを得ないときに、お互いが了承する場合には自分のビデオ映像を非表示にすることにした。そうすると、画面上で見つめ返してくる自分の顔に気を取られて(新しいニキビができた?うーん、保湿しなきゃ!)、会話に集中できないということがなくなり、より積極的に参加できることに気づいた。これこそが良い会話のあり方ではないだろうか?

誤解しないでほしい。私も皆さんと同様に、小さい子どもや子犬が時折会議に乱入してくる様子を見ては楽しんでいる。しかし、ビデオチャットは人を消耗させる。スタンフォード大学の実質現実(VR)研究者のジェレミー・ベイレンソン教授が語ったように、ビデオ会議ツールでは人の顔がしばしば表示されるが、脳はそれらが自らの2フィート(61センチ)圏内にあると解釈し、闘争・逃走反応を引き起こすという。そして、それが度を越すと疲弊してしまう。さらに、インスタグラムのような清潔感のある背景を維持しなければならないという社会的プレッシャーに加え、内向的な性格であってもアイデアを主張しなければならないなど、ビデオ会議は本当に厄介なものと化している。

4.受信トレイに未読が増えても気にしない
私は、電子メールについてとても面倒な問題を抱えている。受信箱に何千通もの未読メールがあることに恐怖を覚えるタイプの人間だからだ。しかし、恐怖から逃れるためには、ジーンズの大売出しについての新着広告に至るまで、受信トレイを隅から隅までクリックし続け、あらゆるメッセージを読んで処理する必要があり、自分の人生を浪費することになる。

2019年に当時アトランティック(Atlantic)誌の記者だったジャーナリストのテイラー・ローレンツは、「インボックス・インフィニティ」の概念を提唱した。ローレンツのやり方は、メールを斜め読みして、目を引くものはないか、重要だと感じるものはないかを確認することから始める。そして、ざっと目を通して重要性を感じなかったものは無視する。

私個人の電子メールに関する抱負は、毎朝、ローレンツ流の斜め読みテクニックを使って、不要なメールの購読を解除し、できるだけ大量に一括削除することだ。これで、受信箱が未読メールで溢れ返ることはなくなり、さらには大売出しでジーンズを衝動買いすることも防げるかもしれない。

5.ニュースを批判的に捉える
米国はパンデミックと社会的混乱のさなかにあるが、今年もまた選挙の年を迎える。つまり、ソーシャルメディア、テレビやラジオ、グループチャットに、真偽の不確かな情報が溢れかえるということだ。本誌の記事を確認し、不確かな情報を広める前にその中身について考えてみてほしい。

その際は、子どもがいたら一緒に参加させよう。「当団体が2019年に発行したある調査報告書では、米国の中学生の3分の1以上が、情報源の信頼性を判断する方法を『ほとんど』または『まったく』学んでいないと回答していることが明らかになりました」と話すのは、若者と保護者の批判的思考力を育むことを目的とした団体、リブート財団(Reboot Foundation)の創設者であるヘレン・リー・ブイグだ。「大抵の場合、若者はネット上でプロパガンダや偽情報を目にしても、それを見分けられるだけのスキルを備えていません」。

ブイグ創設者は保護者に対して、子どもたちがティックトック(TikTok)のようなアプリで目にするトレンドやニュースについて、いつでもコミュニケーションの取れる体制を作っておくことを勧めている。 そうした場所では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の誤情報が横行している。

ブイグは、子どもも大人も、誰しもがニュースを読む際にできることとして、自分の感情を確認する癖を身につけることを挙げている。「記事を読むときや新しい情報を学ぶときには、次のように自分に問いかけてみてください。この情報はどこから来たのか? 信頼性はあるのか? それはどうしてなのか? 情報の切り取り方は、読者や視聴者の捉え方にどのような影響を与えているのか?」

6.アプリの通知をミュートする
ここに挙げた他の項目について何もしないとしても、スマートフォンにあるアプリの通知の一部(またはすべて)をミュートにしてみてほしい。それだけで、情報の消費量を減らし、集中力を高め、不安を軽減できるはずだ。

英国ボーンマス大学のジョン・マカラニー教授によると、通知は注意を払わなければならない緊急事態のように思えるため、人間の注意をそらすのに優れていると言う。マカラニー教授は2021年2月に、オンラインにおける先延ばし行動に関する研究を発表している。 「以前は、社会的な情報を受け取る機会が比較的限られていました。近所の人と話したり、友人や家族に電話をかけたり、ニュースを見たりすることはできましたが、1日のうちでほとんど新しい情報が手に入らない時間帯もあったのです」と、マカラニー教授は述べる。しかし現在では、自分の求めている情報であろうがなかろうが、通知により情報に注意を向けざるを得なくなっていると指摘する。

通知をミュートしてしまうと、大切なことを見逃していないか不安になり、不安な気分になるかもしれない。しかし、私が話を聞いた人の大多数は、この懸念に対して同じようなことを言っていた。どうしても連絡をする必要がある人は、メッセージであれ電話であれ、他の方法を使うはずであると。メンタルヘルスと注意力の観点から、アプリの通知のミュートはおすすめだ。

7.1月を「デジタル断捨離」月間にする
 もしやる気があれば、私の同僚である、テイト・ライアン・モズリー(デジタル権利・民主主義担当記者)を見習ってみよう。テイト記者は今年で4回目となる、毎年恒例のデジタル断捨離月間を迎えた。4週間かけてメール、ファイル、セキュリティ、電話など、デジタル生活の各部分を整理することに集中するのだ。

その方法は次のとおりだ。

1週目:電子メールの「断捨離」をして、不要なニュースレターやメーリングリストの購読を解除し、読むことのない電子メールを大量に削除する。さらに、丸1日をかけて、自分にメールをくれたかもしれない人でまだ返信していない人に連絡を取る。新年は、このような繋がりを復活させるにはちょうど良い機会であり、大切な人たちと新たな気持ちでやり取りを始めることができる。

2週目:ファイル整理に費やす。クラウドやデスクトップ、ドライブ内のファイルを一掃し、あるべき場所に移動することを目指す。「最も苦手な週です」とテイト記者は言う。「でも、終わったとき、心から達成感を得られます」。テイト記者からのアドバイスは、日付順ではなく、大まかなカテゴリでファイルを整理することだ。そして、ファイル編成を実際の仕事と同様に扱うことだ。結局は仕事に直結するからだ。「会議の待ち時間といった、仕事の合間にやったり、1時間の時間を設けて音楽を聴きながらやったりしています」。

3週目:セキュリティ面に専念する。 パスワードマネージャーのラストパス(LastPass)を使って、重要な個人アカウントをそれぞれ確認し、新たに固有パスワードを作成する。テイト記者はさらに、自身自身をグーグルで検索し、インターネット上にある自身のプライベート用電話番号や住所といった機密情報を削除する。ニューヨーク・タイムズ紙のドクシング対策ガイド(こちらから入手可能)はオンラインで個人情報の安全性を確保する方法をわかりやすく説明しており、テイト記者は同ガイドに絶大な信頼を置いている。

4週目:最も楽しい週だ。スマホにたまった写真を整理し、必要のないアプリを削除したり、ホーム画面を再編成したりする。「良い所は、机に向かわなくても作業ができることです」とテイトは言う。「行列に並びながらや、テレビを観ながらでもできます」。また、テイト記者はこの週、アプリの通知をミュートする時間も取っている。

テイト記者にとって、デジタル断捨離月間は必ずしも楽しいものではない。いくつもの課題をやり遂げなければいけないことからも、お分かりいただけるだろう。しかし、2月に入る頃には、非常に多くのことを成し遂げた気分になる。「1年の残りをとても気持ちよく過ごせます。そして12月になると、またこれらすべてを整理するのが待ちきれなくなります。終わった後は最高の気分になれるのですから」。

8.テクノロジーの外にも世界があることを忘れない
昔の人々は、スマートフォンを覗き込むことも、親指でフリックしながらソーシャルメディアを際限なくスクロールすることもなかったはずだ。本を読んだり、周りの人とおしゃべりをしたり、ただ単にぼんやりしたりする時間を楽しんでいた。

ジョージタウン大学のカル・ニューポート教授(コンピューター科学)は、テクノロジー、中でも特に必要のないものとの関係性を改めることを強く勧めている。「重要なことにテクノロジーを使うのは有用なことです」とニューポート教授は述べる。「しかし、不快な考えや経験から逃避するための気晴らしとして使用する場合には問題となることがあります」。今こそ、スマートフォンを置いて、たとえそれが退屈や悲しみ、不安であったとしても、自分の心を感じてみよう。そうすれば、少しは人間らしさを取り戻せるかもしれない。

人気の記事ランキング
  1. What’s on the table at this year’s UN climate conference トランプ再選ショック、開幕したCOP29の議論の行方は?
  2. This AI-generated Minecraft may represent the future of real-time video generation AIがリアルタイムで作り出す、驚きのマイクラ風生成動画
ターニャ・バス [Tanya Basu]米国版 「人間とテクノロジー」担当上級記者
人間とテクノロジーの交差点を取材する上級記者。前職は、デイリー・ビースト(The Daily Beast)とインバース(Inverse)の科学編集者。健康と心理学に関する報道に従事していた。
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る