「現場主義で、誰もが介護したくなる未来を作る」aba 宇井吉美
MITテクノロジーレビュー主催の「Innovators Under 35 Japan Summit 2021」から、aba(アバ) 宇井吉美氏のプレゼンテーションの内容を要約して紹介する。 by Koichi Motoda2021.12.27
MITテクノロジーレビューは12月16日、「Innovators Under 35 Japan Summit 2021」を開催した。Innovators Under 35は、世界的な課題解決に取り組む若きイノベーターの発掘、支援を目的とするアワード。昨年に続き2 回目の開催となる本年度は、35歳未満の起業家や研究者、活動家など15名のイノベーターを選出した。
その受賞者が集う本サミットでは、各受賞者が自らの取り組みへ対する思いや、今後の抱負を3分間で語った。プレゼンテーションの内容を要約して紹介する。
宇井吉美(aba:アバ)
「おむつを開けずに中が見たい」。私が20歳の時に初めて介護施設に行き、介護職の方に言われた言葉でした。介護現場ではおむつを開けるまで、中に何が出ているかが全く分かりません。そのために多くの介護職員が一日に何時間もおむつ交換をしているのですが、そのうちの20、30%はおむつを開けても排泄の痕跡がありません。一方で、もしおむつの外に尿や便が漏れてしまうと、洋服やシーツの交換で十倍以上の労力が必要になります。こういった介護職員と高齢者双方のやりきれない気持ちを解決するために、排泄ケアシステム「ヘルプパッド」という製品を作りました。
センシングとAI、システム開発という3つの技術で介護職員の願いを叶えます。体に機械を付けず、ベッドに敷くだけで排泄が検知でき、尿と便のどちらかも分かるように臭いセンサーを活用しています。またシステム開発技術により、毎日いつ頃排泄してるかが分かり、排泄が予測できるようになります。
私たちは現場主義を徹底しています。私自身、当初はおむつをはいて排泄していました。最近では介護施設に協力いただき、毎晩実験者を派遣して正確なデータを取っています。一緒にヘルプパッドを製品化したパラマウントベッドをはじめ、多くの企業の方々とも膝を付け合わせながら研究開発を行ってきました。テクノロジーで、誰もが介護したくなる、人に優しくしたくなる未来を作っていきます。
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- 元田光一 [Koichi Motoda]日本版 ライター
- サイエンスライター。日本ソフトバンク(現ソフトバンク)でソフトウェアのマニュアル制作に携わった後、理工学系出版社オーム社にて書籍の編集、月刊誌の取材・執筆の経験を積む。現在、ICTからエレクトロニクス、AI、ロボット、地球環境、素粒子物理学まで、幅広い分野で「難しい専門知識をだれでもが理解できるように解説するエキスパート」として活躍。