シンガポールが抱える弱点「水」問題、自給自足は実現するか
世界有数の富裕国であるシンガポールは、水資源に乏しく、マレーシアからの輸入に依存している。政治や気候変動によるリスクを低減するため、シンガポールはさまざまな方法で水の自給自足を模索している。 by Megan Tatum2021.12.28
毎日、リンギウ貯水池は海と静かに戦っている。雨水をマレーシア南部のジョホール川へ供給し、塩分レベルを取扱可能な程度の低さに保っているのだ。シンガポールは1995年にリンギウ貯水池を建造し、1日約2億5000万ガロン(約9億4635万2946リットル)を123キロメートルに及ぶジョホール川から汲み上げる権利を得た。これで国内需要の半分以上を賄っている。しかし2016年に乾期が長引き、貯水池の水位は全容量のほんの20%にまで落ち込んだ。貯水池は小さく、浅くなった。
「我々の水供給に対する現実的なリスクがありました」。シンガポール首相のリー・シェンロンは後に語った。「なぜ我々は節水にこだわらなければならないのか、一滴一滴を大切にしなければならないのか、その理由を鮮明に思い出させる出来事でした」 。
シンガポールは昔から水安全保障に懸念を抱えていた。都市国家であるシンガポールは陸地が小さく、天然湖や帯水層が不足しており、1960年代の独立以降、水はずっと第一優先事項だった。
「シンガポールは赤道付近に位置しており、豊富な雨に恵まれていますが、国内に降った全雨水を集めて貯水するための陸地が不足しているため、深刻な水ストレスを抱えた国なのです」。シンガポールの国家水資源機構である公益事業庁(PUB:Public Utilities Board)のハリー・シアー副業務本部長は説明する。2015年、世界資源研究所(WRI:World Resources Institute)はシンガポールを水ストレスに対して最も脆弱な国というランクに位置づけた。このランクは乾燥地域の国であるバーレーン、カタール、クウェートと同格である。
何十年も、シンガポールは隣国のマレーシアから水を輸入するという協定を介して自国の需要の大部分を満たしてきた。2011年にそうした協定の1つが失効した。2番目の協定がリンギウ貯水池からシンガポールに水を引く権利を与えており、こちらは現在も有効である。
しかし水源は脆弱だ。干ばつに弱いだけではなく政治的にも弱い。「過去、水が係争のテーマとなり、2国(マレーシアとシンガポール)の関係に摩擦が生じたことが何度もありました」と、香港教育大学アジア政策研究学部の博士研究員であるストゥッティ・ラワット(Stuti Rawat)は語る。2018年、当時のマレーシア首相マハティール・ …
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