KADOKAWA Technology Review
×
「水不足」にあえぐパキスタン、アグテック企業が農家の節水を支援
Crop2X
気候変動/エネルギー 無料会員限定
Can data help quench the thirst of Pakistan's most populous city?

「水不足」にあえぐパキスタン、アグテック企業が農家の節水を支援

パキスタンは水危機のリスクが最も高い国の一つであり、カラチでは水道が何日も断水することがよくある。そうした中で、農家の節水を支援することで市民の飲み水を確保しようとするアグテック(農業テクノロジー)関連のスタートアップ企業が現れている。 by Mariya Karimjee2021.12.27

アーサン・ラフマーンは、2016年にパキスタンの名門工学系大学を卒業したとき、人々を助ける仕事に就くことを志していた。そして、人助けのアイデアを見つけるのに苦労はしなかった。カラチにある彼の家では、家族が市の水道管から何日も水を得られないことがよくあった。最初は、市の地下を流れる帯水層に井戸を掘っていた。しかし、帯水層が枯れてくると、市の配水車で水の供給を補うようになった。最終的に彼の家族は、さらに深い井戸を掘ることにした。周りの人が同じことをすれば、市の地下水の供給がさらに危うくなることを知ったうえでのことだ。「最後にはみんなが共倒れになる競争のようなものです」とラフマーンは言う。「個人的には、このようなことをしなければならないのは本当に申し訳ないと思っています。しかし他にどうすることもできないのです」。

パキスタンは、水危機のリスクが最も高い国の一つとして常に挙げられている。かつてよりも降雨が激しくなったものの、頻度は下がり、地下水の補給が難しくなっている。また、気温の上昇により蒸発量が増え、作物の水不足が深刻化している。いずれは、この国の重要な水源である雪解け水と氷河の融解水は、雀の涙ほどの量になってしまうだろう。

しかし、パキスタンが水問題に直面しているのは、単に気候変動のせいだけではない。水保全の専門家によれば、資源の不適切な管理、地下水の枯渇、不十分な貯水などが重なり、水の供給システムの不安定化につながっているという。

パキスタンで最も人口の多い都市カラチではそれが特に顕著だ。そこでは、毎日約何十万キロリットルもの水が不足している。それにもかかわらず、水は常に低価格で、使用量は計測されず、多くの水源は管理されていない。

ラフマーンはカラチの水の未来を憂慮して、2016年に創業し …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. What’s on the table at this year’s UN climate conference トランプ再選ショック、開幕したCOP29の議論の行方は?
  2. This AI-generated Minecraft may represent the future of real-time video generation AIがリアルタイムで作り出す、驚きのマイクラ風生成動画
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る