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気候災害の絶望でも見えた
かすかな希望の光
Getty
気候変動/エネルギー Insider Online限定
The rare spots of good news on climate change

気候災害の絶望でも見えた
かすかな希望の光

今世紀中に平均気温が5℃以上上昇し、海面が上昇して多くの土地で人が住めなくなる——。気候変動の話題ではこうした悲観的な話が目立つ。だが、温暖化対策は冷静かつ着実に進めることが重要だ。 by James Temple2022.01.06

気候変動がもたらす致命的な影響は、2021年にますます明らかになった。記録破りの熱波や洪水、数千人の犠牲者を出した山火事など、災害対応は限界を迎えた。

2021年終盤には、南極大陸でフロリダ州と同じ大きさの氷河の棚氷が崩壊しそうだと科学者が警告している。また、抜本的な気候政策を策定するにはこの10年間で最も良い機会であったのに、米議員はそのチャンスを逃してしまった可能性がある。

しかし、このような厳しい状況のなか、気候変動対策への機運が高まりつつあるという兆しも現れている。実際のところ、現在では、世界が少なくとも地球温暖化の最悪の危機を回避できると信じるに足る十分な理由があるのだ。

プリンストン大学でエネルギーについて研究しているジェシー・ジェンキンスは、最近のツイートで、私たちが到達した奇妙な一時点について、隠語を使って的確に表現している。「We’re no longer totally f$%@ed.But we’re also far from totally unf$@%*ed!(私たちはもはや全く絶望的な状況ではありません。しかし、同時に、完全に楽観視できる状況には程遠いです)」。

確かに、限定的な進歩では全く不十分である。私たちは、実質的な変化をもたらし始めるまで長くかかりすぎているのだ。さらに、世界の出来事や政治的な要因によって、取り組みの進捗が遅くなったり、流れが変わったりする可能性も依然として存在する。そのため、温暖化対策が多少前進したからといって、世代を超える課題を前に、より大きな行動を求める圧力を緩めることはできない。

とはいえ、世界がこれまで達成した進歩を明らかにし、それについて熟考することは意義あることだ。進歩が可能であることを示すだけでなく、さらなる進歩を遂げるための雛形を提供できるからである。

気候変動対策の推進に向けた機運

では、気候変動が深刻化する中、対策の進展を示す兆候にはどのようなものがあるのだろうか。

わずか数年前に多くの人が懸念していた最悪のシナリオが実現する可能性は、ますます低くなっているようだ。最悪のシナリオには、私を含めた何人かが以前、可能性があるとして強調した、今世紀中に4℃〜5℃の温暖化が進むとの予測も含む。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が作成した排出量が最も多いシナリオ「RCP8.5」では以前、世界の気温が2100年までに5°C以上上昇する可能性があるとされていた。こうした想定は、気候変動リスクを評価する研究に頻繁に含まれ、最悪の場合のシナリオとしてマスコミでしばしば引用され、注目されてきた(かくいう私も引用した1人である)。

そもそも最初からそれが妥当な予測だったのかとの意見もある。そして、石炭火力発電から、まず低炭素の天然ガスへ、そして次に脱炭素の風力や太陽光へと急速に移行していることを考えると、最悪のシナリオはますます起こりそうにないと思えてしまう。

世界の森林や農地、草地の増減を集計した土地利用の変化に関する最近の調査結果を考慮に入れると、世界のCO2排出量はすでに横ばいになっている可能性がある。

クライメート・アクション・トラッカー(Climate Action Tracker)によると、現在、世界中ですでに実施されているすべての気候政策を勘案すれば、今世紀の気温の上昇は2.7°Cになる可能性があることが中間試算として示されている(同様に、国連の最新レポートでも、「中間」の排出シナリオでは、気温上昇が2.1℃と3.5°Cの間になるだろうと予想されている)。

グラスゴーにおける最近の国連気候変動サミットで表明された新たな約束を含め、各国がパリ協定に基づく排出量の誓約を履行すると仮定すると、その数値は2.4°Cに下がる。そして、すべての国が、今世紀半ば頃までに排出量実質ゼロの目標を達成すれば、数値は1.8℃まで低下する。

今後ますます厳しい気候変動政策が実行に移され、太陽光発電や風力発電のコストが急落することを考えると、再生可能エネルギー開発が活況を呈することになるだろう。過去に再生可能エネルギーの成長を過小評価していた悪評で知られる国際エネルギー機関(IEA)は、現在では世界の再生可能エネルギーによる発電容量が2026年までに60%以上増加すると発表している。そして、2026年の時点で、太陽光、風力、水力発電ダムなどの再生可能エネルギー施設の発電容量は、世界中の化石燃料や原子力による発電容量に匹敵するようになるだろう。

さらに、電気自動車の新車販売台数は、数年間、500万台に満たない状態で推移していたが、現在は販売が急増している。ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BloombergNEF)によると、自動車メーカーがより多くの車種を発売し、政府がより積極的な政策を実施していることに伴い、今年の販売台数は約560万台に達し、2020年と比較して80 …

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