英国グラスゴーで10月31日から11月13日まで開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)で、炭素市場に関連する規則がようやく採択された。各国は国際的な炭素市場の確立に向けて動き出している。
COP26の合意(「グラスゴー気候合意」)に基づいて、各国は間もなく国連認証のカーボン・クレジットを相互に売買できるようになり、2015年のパリ協定で誓約した温室効果ガス削減目標を達成するための手段として活用できるようになる。
しかし、今回採択された新ルールには、各国が実際よりも多くの排出量を削減しているように見せかけることができる大きな抜け穴があると懸念する声もある。また、今回の合意により、民間主導のカーボン・オフセット市場で、気候変動への効果を誇張していると批判されている類のカーボン・クレジットの創出が加速されるかもしれないと警告する人もいる。
カーボン・クレジットは、1トンの二酸化炭素排出量を削減、または大気から1トンの二酸化炭素を回収すると主張するプロジェクトから生成される。森林破壊の防止、植樹、特定の土壌管理手法の採用などの活動に対してクレジットが付与されることが多い。
来年から会議を開催する予定の新しい監督機関が、国連認定カーボン・クレジットの販売を目指すプロジェクトを検証、監視、認可するための最終的な方法を策定することになる。今回のグラスゴー気候合意により、他国と協力して温室効果ガス排出量削減プロジェクトに取り組むことで、各国がパリ協定の目標を達成するためのクレジットを獲得できる新たなプロセスが確立されることになる。たとえば、他国の再生可能エネルギー発電所に資金を提供するといったプロジェクトだ。
国連が支援する炭素市場がどの程度の規模になるのか、新たなルールが実際にどのような役割を果たすのか、最終的な方法が決定するまでに詳細がどの程度変更されるのかについては、専門家の間でも意見が分かれている。しかし、トロント大学の政治学准教授で、気候変動対策と炭素市場を専門に研究しているジェシカ・グリーンは、「炭素を商品として取引するためのインフラが、混乱含みではあるものの、ゆっくり、少しずつ構築されています」と言う。
米国と欧州連合(EU)は、パリ協定に基づく排出量削減目標を達成するためにカーボン・クレジットを利用するつもりはないと表明した。しかし、カーボン・ブリーフ(Carbon Brief)によると、カナダ、日本、ニュージーランド、ノルウェー、韓国、スイスなどの国は、カーボン・クレジットを利用すると発表した。実際、スイスはすでにペルー、ガーナ、タイでのプロジェクトに資金提供をしており、その取り組みをパリ協定の目標達成に計上したいと考えている。
COP26では、ほとんどの観測筋が称賛する少なくとも1つの大きな成果がある。それは、COP26で採択された新ルールでは、大部分の気候変動対策効果の二重計上を防ぐことができるという点だ。カーボン・クレジットを取引する2つの国のどちらかは、その気候変動への効果をパリ協定の目標達成に計上することはできない。クレジットを購入する国か、クレジットを保有する国だけがクレジットを計上できる。
民間主導市場の問題点
しかし、専門家の中には二重計上が起こる方法がまだあるのではないかと危惧する人もいる。
カーボン・オフセット・プロジェクトの開発者は長い間、ヴェラ(Verra)やゴールド・スタンダード(Gold Standard)といった登録団体が管理する民間主導のプログラムを通じて、カーボン・クレジットを生成・販売することが可能だった。石油ガス会社、航空会社、およびハイテク大手はすべて、排出量を正味ゼロにする目標の達 …