世界の武器売買とサイバー監視産業との重なり合いが増えていくことで、米国の国家安全保障が損われ、説明責任が導入されない限りさらに悪用される可能性がある——。新たな研究はこう指摘している。
米国のシンクタンク「大西洋評議会(Atlantic Council)」による調査は、サイバー監視産業について具体的な数字を挙げて報告している。サイバー監視産業の企業は、大陸間を跨ぎ急成長を遂げており、数十億ドルも稼ぎ出している。だが、ほとんど世間から注目されないように経営されているという。ここ数年、ハッカー向け製品への需要が高まっており、NSOグループなどの企業による悪用が多く報告されている。いまや、ほとんど実態が明かされないサイバー監視産業に世界中の国が対処しようとしている。
今回の報告書は、サイバー監視関連の展示会「ISSワールド」や、フランスの武器見本市「ミリポル(Milipol)」から収集した20年分のデータを基にしたものだ。これらの展示会では、銃や戦車などの従来の武器と並び、ハッキングが急成長分野となっている。報告書の著者らは、展示会に出展したサイバー監視企業224社のマーケティング資料を詳しく調査。サイバー監視やハッキング・ツールを世界のどこで売り込んでいるかを調べ、既知の販売状況について考察した。
その上で、特に北大西洋条約機構(NATO)の敵対国に対してグローバルに製品を売買する多くの企業は「無責任な拡散者」であり、政策立案者がもっと注視すべき存在だと主張している。
携帯電話のハッキングおよびフォレンジック・ツールを開発し、米国やロシア、中国など世界中の国々に製品を販売している企業に、イスラエルのセレブライト(Cellebrite)がある。同社は、香港における中国政府の弾圧で担った役割や、その技術がバングラデシュの「暗殺部隊」に使われていたことが発覚し、相当な逆風にさらされている。
「こうした企業がNATO加盟国とその敵対国のどちらにも製品を売り始めた今、すべての顧客へ国家安全保障上の懸念を引き起こすでしょう」と報告書は指摘している。
報告書によれば、製品の取引はますますグローバル化しており、75%の企業が自国の大陸外でサイバー監視およびハッキング製品を …