CGは世界をどう変えたのか ピクサー共同創業者の考え
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We are awash in digital light CGは世界をどう変えたのか
ピクサー共同創業者の考え

ピクサー共同創業者であるアルヴィ・レイ・スミスが、コンピューター・グラフィックスの歴史をひもとく著作『A Biography of the Pixel(ピクセルの歴史)』を出版した。スミスは本書で、コンピュータグラフィックの発展に真に貢献した人物を描くとともに、「デジタル・ライト(Digital Light)」の革新性について語っている。 by Chris Turner2021.11.11

コンピューター科学者のアルヴィ・レイ・スミスは、ルーカスフィルム(Lucasfilm)のコンピューター・グラフィックス部門とピクサー・アニメーション・スタジオ(Pixar Animation Studios)の両方の共同設立に参加した。これらの功績だけでも、少なくとも第2次世界大戦後の映画界における、最も重要な技術的革新者の1人だと言える。だが、スミスはハリウッド的な人物ではないし、スミスの興味深い新著『A Biography of the Pixel(ピクセルの歴史)』(未邦訳)もハリウッドの内幕物ではない。ゴシップはほんのわずか(スティーブ・ジョブズは一緒に仕事をするのが難しい人物だった……やっぱり!)だし、スミスの物語に頻繁に登場する有名セレブはジョージ・ルーカスだけだ。スミスは、名声には興味がない。彼はより深遠なテーマを追求しており、自身が一端を担った偉大なプロジェクト、すなわちコンピューター・グラフィックスの発明と発展は、ハリウッド史上群を抜いて重要な出来事であると主張している。

スミスは、かつてのコンピューター・プログラミング業界で「グレイビアード(灰色のひげを生やした人、転じて「賢人」を指す)」と呼ばれていたような人物だ。極秘の軍事プロジェクトや世界を征服するための宇宙計画などを起点に、デジタル時代が隆盛していく様を目撃してきた世代のエンジニアであり、プログラマーである。スミスは機械語を扱い、黒と緑の画面上で動く最初の粗いグラフィックスに驚嘆し、デジタル「ペイント」で滑らかな曲線を描くスタイラスの新しい力を、最初に示した1人となった。

『ピクセルの歴史』におけるスミスの狙いは、2つの絡み合った重要なストーリーの軌跡を明確に示すことだ。1つ目のストーリーは、起源からデジタル・ユビキタスに至るまでの、コンピューター画像開発の歴史。スミスによれば、記録に残っていない名前や場所、ブレークスルーがたくさんあり、彼は正確なエンジニアの目でそれらを再び蘇らせている。並行して語られる2つ目のストーリーは、コンピューター画像が持つ影響力、すなわちスミスが「デジタル・ライト(Digital Light)」と呼ぶ変革の力に関するものだ。デジタル・ライトとは、基本的に私たちが画面を通して経験するあらゆるものを指す。これは、洞窟壁に最初の単純な日常描写が刻まれて以来、人類のコミュニケーションにおいて最も重要なイノベーションの1つだと、スミスは説得力を持って主張している。

ほんの些細なピクセル

スミスが繰り返し示すように、あまりに多くの功績が、天才たち一人一人の魔術によるものとされている。実際のところは、不明瞭に重なり合った発明家たちが背後に存在し、彼らが次々と競争・協力しながら、多くの場合特定の目的のために、大きな商業的・政治的プレッシャーの下で働いてきた。

例えば、トーマス・エジソンやフランスのリュミエール兄弟は、初期の映画技術の偉大な推進者だったが、手柄を横取りしてもいた。いずれも1895年前後にシステム全体を提示し、嬉々としてすべての功績を自分のものだと主張したが、カメラ、フィルム、映写機からなる最初の完全なシステムの全体(または大半)を自身の手で構築したわけではなかった。誰が映画を発明したか? という質問に対する本当の答えは、さまざまな人間がひしめき合う「藪の中」であり、システムの一部はエジソンのかつてのパートナーが開発し、リュミエールに協力した何人かのフランス人発明家たちも、似たようなパーツを開発したとスミスは記している。

歴史の隅に追いやられた重要人物の中に、ウィリアム・ケネディ・ローリー・ディクソン(エジソンのために最初の映画用カメラを設計・製作した風変わりな欧州貴族)や、ジョルジュ・ドムニー(自身の設計がリュミエール兄弟によって不当にコピーされた人物)らがいる。スミスは、これらの入り組んだ黎明期の物語に救いの手を差し伸べるため、徹底的に調査した結果を必要以上に紹介している。コンピューターとグラフィックスの開発に関しても、あらゆる重要な段階で、同様の入り組んだ混乱が描かれている。しかし、歴史的記録を正そうとするスミスの努力は、称賛に値するものだ。

数世代にわたる力強い男たち(残念ながら実質的に全員が男性である)のエゴと強欲に満ちたこれらの論争の主な欠点は、スミスがさらに重点を置くテーマから時折焦点をそらしてしまっていることだ。デジタル・ライトの夜明けが、人々の生活を大きく変化させた画期的なものとして語られるに値する、ということである。

スミスの最も単純な定義によると、デジタル・ライトとは「ピクセルで構成されるすべての画像」だ。しかし、この専門用語は、デジタル・ライトの隆盛によって生み出された「新しい想像力の広大な領域」の重要性を十分に表現しきれていない。その領域に入るものとしては、ピクサー映画はもちろん、ビデオ・ゲームやスマホアプリ、ノートPCのオペレーティング・システム、ソーシャル・メディアでやりとりされるふざけたGIF画像、生命に関わる診断でがん専門医が確認する磁気共鳴画像(MRI)、近所の食料品店に設置されたタッチ・スクリーン、火星ミッションを計画するためのデジタル・モデルなどが挙げられる。そして、火星ミッションからは、赤い惑星の表面を映した驚異的な画像という形で、さらなるデジタル・ライトがもたらされる。

これらは、全体のほんの一部だ。スミスの著作の印象的な側面の1つは、目覚めている時間の大半で多くの人が見つめているピクセルの絶え間ない流れから十分に距離を置いて、このデジタル・ライト全体が表象する傑出した技術的成果と強力な文化的影響力を認識するよう、読者を誘っている点だ。

これらすべてを可能にした技術的なブレークスルーの正体は、スミスが付けたタイトルが示すように、ほんの小さなピクセルだ。「pixel(画素)」という単語は「picture(画像)」と「element(要素)」を掛け合わせた言葉で、単純明快なものだ。しかし一般的な用法では、ピクセルは描画が不十分なデジタル画像の、ぼやけたブロック状の粗い矩形を指すものと誤解されている。実際はそうではなく、ピクセルはあ …

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