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エディターズ・レター:歴史から学ぶコンピューティングの未来
Robyn Kessler
Hello, from the mysterious world of computing

エディターズ・レター:歴史から学ぶコンピューティングの未来

1980年代、最初のパーソナル・コンピューターは少し神秘的で、非常に魅力的なものだった。コンピューティングに関する特集では、現在、それがさらに神秘的になっていることを示している。米国版編集長からのエディターズ・レター。 by Mat Honan2022.01.12

私がMITテクノロジーレビューの新編集長に就任してから、担当した初めての号をお届けする。読者の中には私のように何年も『MITテクノロジーレビュー』を購読している人もいるだろうし、この号が初めての号になる人もいるかもしれない。いずれにせよ、この雑誌を毎回楽しみにしてもらえるものにしていく機会を与えられたことを、うれしく思う。私たちが今回の特集をまとめるのを楽しんだように、皆さんが楽しんでくれることを願っている。

まず、お約束する。私たちはMITテクノロジーレビューを、時間をかけて読み、お金をかけて購読する価値のある雑誌にする。ほとんど不可能と思われるものについて、信じられないようなニュースをお届けする。隠された真実を明らかにし、取り上げた業界や人々に説明を求めていく。科学技術が、私たちが共有するこの世界をどのように変えていくのかを理解するお手伝いをする。これからの時代に夢と希望を抱けるようにする。そして、読むのをやめられずに、停車駅を乗り過ごしてしまうような雑誌にしたい。

ご存知のように、それぞれの号にはそれぞれのテーマがある。今回のテーマは「コンピューティング」だ。このテーマは私たちが取り上げる内容の中核をなすトピックであり、真正面から取り組む必要があると考えている。

私が幼い頃、パソコンはまったく新しいものだった。パソコンを使うにはその言語を知っていなければならず、少し神秘的で、非常に魅力的なものだった。母の仕事部屋にあったパソコンを数え切れないほどいじり、簡単なプログラムを書いたり、ゾーク(Zork:最初期のインタラクティブフィクション形式のコンピューターゲーム)のダンジョンを探検したりして、箱の中の宇宙を理解しようとした。

現在、コンピューターは、ポケットの中や自動車、そして家の壁など、あらゆるところに存在している。そして、コンピューターやコンピューティングは、はるかにユビキタスで身近なものになり、その役割は、私たちが子どもだった1980年代よりもさらに神秘的なものになっている。現代の生活のほとんどすべての側面は、いまや私たちがコントロールできないシステムによって調整されている。これは単に、ネットワークやサービス、またはアルゴリズムが、目に見えない存在によって維持されているからというだけではない。ウィル・ダグラス・ヘブン編集者が指摘するように、人工知能(AI)の台頭によって、コンピューティングの仕組みの本質が変わってきているのだ。私たちは、少しでも物事を解明する手助けがしたいと考えている。

今号では、私たちがどのようにして現在に至ったのか、そして次にどこへ行こうとしているのかを探る。 マーガレット・オマラ教授の包括的な序論では、コンピューティングの軌跡をより大きな歴史的文脈の中で説明している。シヴォーン・ロバーツ編集者のP対NP問題(P≠NP予想)の探求は、決定的な答えを見つけようとした根気強い研究者たちの長い道のりを明らかにしている。クリス・ターナーが寄稿した『A Biography of the Pixel(ピクセルの歴史)』の書評は、「デジタル・ライト」の複雑な歴史を探ることから始まり、「スチームハム(Steamed Hams)」のミームについての、予想外で実に楽しい論説へと展開している(ぜひ読んでみてほしい)。

だが、歴史は現在に役立つものだ。モーガン・エイムズ准教授は、「子ども一人ひとりにノートPCを」の宣伝文句を分析し、社会的にもっとも弱い立場にある人々が、真の意味で平等に利用できるようにするための、より良い方法を見つけようとしている。フェイ・コブ・ペイトン教授、リネット・ヤーガー准教授、ビクター・ムバリカ教授は、少数派のグループのために、どのようにして業界へ飛び込む真の道を構築するかを説明している。ラクシュミー・チャンドラセカラン記者は、シリコンが他のテクノロジー(スピントロニクスなどを覚えているだろうか?)に勝利した経緯を検証し、これらの代替テクノロジーが最終的にはその価値を証明する可能性を示している。一方、クライブ・トンプソンは、革新的なプロセスによって、ムーアの法則を(少なくとも今のところは)維持しているオランダの企業「ASML」を取り上げている。

しかし、奇妙で刺激的なことが起こるのは未来の話だ。アラン・アスプル・グージック教授は、AIとロボット工学を組み合わせて、材料の発見を加速させようとしている。その究極の目的は、気候変動のような厄介な問題を解決することだ。アントニオ・レガラードは、脳コンピューター・インターフェイス(脳機械インターフェイス)について取り上げる。心で機械をコントロールできるだけでなく、人工的なニューラル・ネットワークとの共同作業(「シェアード・エージェンシー」と呼ばれる出力結果)が可能になる時代が来ることを想像して、読み終わった後は正直、しばらく座って考え込んでしまった。すごい話だ。

もちろん、まだまだ多くのことがこの特集には書かれている。読み進める中で、首元を掴まれ、立ち止まって考えさせられる何かが見つかることを願っている。

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マット・ホーナン [Mat Honan]米国版 編集長
MITテクノロジーレビューのグローバル編集長。前職のバズフィード・ニュースでは責任編集者を務め、テクノロジー取材班を立ち上げた。同チームはジョージ・ポルク賞、リビングストン賞、ピューリッツァー賞を受賞している。バズフィード以前は、ワイアード誌のコラムニスト/上級ライターとして、20年以上にわたってテック業界を取材してきた。
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