宇宙科学者がより多くのデータを収集するようになるにつれて、世界中の天文台で、あらゆるデータの意味を理解するための新しい手法が取り入れられるようになっている。スーパーコンピューター、クラウド・コンピューティング、深層学習といったテクノロジーが宇宙に関する天文学者の研究にどのような変化をもたらしているか? いくつか例を紹介しよう。
ブラックホールが衝突するとどうなるか?
宇宙物理学者のエライユ・フエルタ博士は、米国の大学で博士課程研究員として勤務していたころ、専門分野でさらに多くのブレークスルーを起こすためのテクノロジーの活用方法について考え始めた。2015年、「ライゴ(LIGO:Laser Interferometer Gravitational-Wave Observatory、レーザー干渉計重力波観測所)」で、重力波が初めて検出されたころのことだ。
科学者たちは当時からずっと、LIGOの観測結果を図表化し、捉えどころのない力についてできるだけ理解しようと取り組んでいる。さらに数十の重力波信号が検出されているが、コンピューターの進歩のおかげもあって、ついて行くことができている。
フエルタ博士は当時、重力波検出器で収集したデータを、可能性のある波形のカタログと照合するという、うんざりするような方法で重力波を探索していた。だが、もっと良い方法を見つけたいと考えていた。
現在はアルゴンヌ国立研究所にコンピューター科学者として勤務するフエルタ博士は、2021年初めに、LIGOの1カ月分のデータをわずか7分で処理できる人工知能(AI)システムを開発した。
GPU(画像処理装置)上で動作するフエルタ博士のアルゴリズムは、AIの進歩と分散コンピューティングの進歩を組み合わせたものだ。フエルタ博士は、個別のコンピューター、あるいは単一のシステムとして動作するネットワークを使用して、ブラックホールのような重力の強い場所を特定可能にした。ブラックホールは、合体すると重力波が発生する。
フエルタ博士のAIモデル集はオープンソースとして公開されており、誰でも使用できる。「スーパーコンピューターは誰でも使 …