KADOKAWA Technology Review
×
【冬割】 年間購読料20%オフキャンペーン実施中!
スパコンで作った「本物の楽器の音」が開いた音楽の新境地
Daniel Zender
コンピューティング Insider Online限定
These impossible instruments could change the future of music

スパコンで作った「本物の楽器の音」が開いた音楽の新境地

スーパーコンピューターを使って本物の楽器の音の再現を目指す英国の研究プロジェクトは、結果として音楽の新たな可能性を開いた。音楽家たちは現実にはあり得ない楽器を、現実にはあり得ない環境で演奏するようになったのだ。 by Will Douglas Heaven2021.11.02

ガディ・サスーンは2016年、ミラノで開かれたコンサートの舞台裏でミケーレ・ドゥチェスキ准教授と出会った。この時はまだ、1マイル(約1.6キロメートル)の長さのトランペットを「竜の炎」で吹いたり、ギターを針のように細い宇宙人の指でかき鳴らしたりして音楽を作るというアイデアは、サスーンにはなかった。当時の彼は、ドゥチェスキ准教授のチームが再現していたクラシック楽器の日常的な音に、ただただ圧倒されていた。

量子時代のコンピューティング
この記事はマガジン「量子時代のコンピューティング」に収録されています。 マガジンの紹介

「初めて聴いたときには、そのリアルさが信じられませんでした。これらの音がコンピューターで作られたものだとは信じられなかったのです」。イタリアを拠点に活動する作曲家のサスーンは語る。「それはまったく革新的な、次のレベルに到達したものでした」。

サスーンが耳にしたのは、当時ドゥチェスキ准教授が研究員をしていたスコットランドのエディンバラ大学で進められていた、興味深いプロジェクトの初期の成果だった。「次世代サウンド・シンセシス(NESS:Next Generation Sound Synthesis)」チームは、数学者、物理学者、コンピューター科学者を集めて、トランペット、ギター、バイオリンなどのリアルなシミュレーションをスーパーコンピューター上で実行し、これまでにない本物そっくりなデジタル音楽を作り出していた。

オーケストラ音楽とデジタル音楽の両方に携わり、「この2つを融合させようとしていた」サスーンは夢中になった。彼はNESSの常駐作曲家(Resident Composer)となり、その後数年間、ミラノとエジンバラの間を行き来した。

NESSの扱い方を学ぶ学習曲線は急なものだった。「最初の1年は、ただ学ぶことに費やしたと言ってもいいでしょう。彼らは私にとても辛抱強く接してくれました」とサスーンは言う。しかし、それは報われた。2020年末、サスーンは『Multiverse(マルチバース)』をリリースした。大学の研究室で長い夜を過ごしながら思いついたサウンドを駆使して作り上げたアルバムだ。

コン …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【冬割】実施中! 年間購読料20%オフ!
人気の記事ランキング
  1. Promotion Innovators Under 35 Japan × CROSS U 無料イベント「U35イノベーターと考える研究者のキャリア戦略」のご案内
  2. The 8 worst technology failures of 2024 MITTRが選ぶ、 2024年に「やらかした」 テクノロジー8選
  3. AI’s search for more energy is growing more urgent 生成AIの隠れた代償、激増するデータセンターの環境負荷
▼Promotion 冬割 年間購読料20%off
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る