富裕国で進むブースター接種、専門家が語る倫理的問題点
ビジネス・インパクト

The pandemic problems that boosters won’t solve 富裕国で進むブースター接種、専門家が語る倫理的問題点

3回目のワクチン接種(ブースター・ショット)の実施へ向けた準備が一部の国で進む中、いまだに1回目の接種すらままならない国も多い。 by Lindsay Muscato2021.09.29

米国疾病予防管理センター(CDC)が広い年齢層の米国民への新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの追加接種を支持したのを受け、米国のブースター(追加接種)プログラムが始動しようとしている。

CDCは現在、65歳以上の人、長期治療を受けている成人、50歳以上の基礎疾患のある人を対象に、3回目のファイザー/バイオンテック(BioNTech)製ワクチンの接種を受けるよう勧めている(最初にジョンソン・エンド・ジョンソン製またはモデルナ(Moderna)製を接種した人はもう少し待たなければならないだろう)。CDCの所長を務めるロシェル・ワレンスキー博士が諮問委員会の決定を覆したため、最前線で働く労働者、感染リスクが高い人もブースター接種を受けられるようになる。

しかし、ワクチン接種は今もなお重症化や入院を防ぐのに大きな効果があることから、この決定は物議を醸している。多くの専門家は、米国内のワクチン未接種者の接種を増やすことや、人口の2%余りしか接種しておらず、ワクチンを切望している低所得国にワクチンを送ることを優先すべきだと考えている。

9月初旬、世界保健機関(WHO)は、少なくともすべての国の人口の10%がワクチンを接種するまで、ブースター接種を延期するよう求めた。しかし、英国、フランス、イスラエル、そして今回の米国などの富裕国は、おかまいなくブースター・プログラムを着々と進めている。

ブースター接種を巡る緊張をはらんだ議論は、公衆衛生の当局者、政治家、生命倫理学者に複雑な倫理的問題を提起している。世界の大部分の人が1回目の接種を待っている時に、より豊かな国の国民が3回目の接種を受けるのは正当なことなのか?  また、CDCなどの機関は、誰がブースター接種を受けるべきかを、どのように決定するのか?

MITテクノロジーレビューは、生命倫理学と保健医療研究を専門とするアニタ・ホー准教授(ブリティッシュコロンビア大学、カリフォルニア大学サンフランシスコ校)に話を聞くことにした。ホー准教授は、以前、米国のワクチン接種の開始と不平等について話してくれた研究者だ。いまだパンデミックが収束しない中、状況はどのようにように変わったのか。ホー准教授に尋ねた。

なお、以下のインタビューは、発言の趣旨を明確にし、長さを調整するため、編集されている。

——一部の米国人へのブースター接種における、倫理的配慮とは何でしょうか? 特に、感染リスクの高い仕事をしている人にブースター接種を提供する、という考え方について教えてください。

ある意味で、倫理的配慮はワクチンが最 …

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