フェイスブックは9月9日、299ドルの新スマートグラス「レイバン・ストーリーズ(Ray-Ban Stories)」を発表した。このスマートグラスを着用すると、画像や短い動画を記録して共有したり、音楽を聴いたり、電話に出たりすることができる。レイバン・ストーリーズの購入者らは、近いうちに公共の場やプライベートな場に現れては、他人を撮影し、録画し、フェイスブックの新アプリ「ビュー(View)」を介して、画像や動画などのコンテンツを並べてアップロードするようになるだろう。
このようなスマートグラスについて筆者が抱く懸念は、スマートグラスが現在どんなものであるかということもあるが、主に、スマートグラスが将来的にどのようなものになり、社会をどのように変えるのかという点にある。
常に周囲の者がステルス監視機器を身につけている可能性を意識しながら、私たちは公共の場でどのような気持ちで生活するのだろうか? 何十年も前から人々は公共の場で他人を撮影・録画してきたが、常人がそれに気づくのは難しくなってきた。フェイスブックの新スマートグラスによって、気づくのはさらに困難になるだろう。レイバン・ストーリーズはレイバンのブランドで販売され、外見も同ブランド商品と似通っているからだ。
レイバン・ブランドで受け継がれ、定評がある「クールさ」によって、フェイスブックのレイバン・ストーリーズは、メッセージアプリの「スナップチャット(Snapchat)」を運営するスナップ(Snap)が提供する「スペクタクルズ(Spectacles)」をはじめとする他のカメラ付きメガネよりも多くの人々を魅了するかもしれない(ちなみに、フェイスブックのユーザー数はスナップチャットよりもおよそ20億人多い)。フェイスブックはさらに、レイバンの親会社であるルックスオティカ(Luxottica)のグローバルなサプライチェーンと小売店のインフラも利用できる。つまり、世界規模の製品展開にも迅速に対応できるのだ。
レイバン・ストーリーズは、スマートフォンなどの表面に触れることなく画像や音声を記録することができるため、目下のパンデミックの時期には特に人気を集める可能性がある。我が子に気を配りながらも、ふとした瞬間を撮影したいと考える親たちの間でも好評を博すかもしれない。
フェイスブックのスマートグラスで撮影することは、一見するとスマートフォンで写真やビデオを撮るのと大差ないように思えるかもしれない。しかし、スマートグラスが着用者の目を覆い、その視点から写真やビデオを作成する方式は、社会集団にとっての撮影行為のあり方を変える。
レイバン・ストーリーズによって、フェイスブックは人々の顔を自社テクノロジーのための財産として獲得することになる。レイバン・ストーリーズが常にビューファインダーとして機能することで、レイバン・ストーリーズの着用者が何らかのグループに参加する際には、そのときの経験よりも自分の視点に比重が置かれることになるだろう。つまり、グループに参加することよりも、独自の視点でシーンを撮影することに気を取られることになるかもしれない。1つのグループで複数の人がこのスマートグラスをかけ …