米国のジョー・バイデン大統領は、米国の大勢の労働者に対して、新型コロナウイルス・ワクチンの接種を求める大統領令に署名した。100人以上の従業員を抱えるすべての企業、保健医療や介護従事者、連邦政府職員や政府の請負業者が対象で、従業員にワクチンの接種か、週1回以上の検査を義務付ける。雇用者には、接種を受ける従業員に有給休暇を与える義務が発生する。
政府職員が拒否した場合には懲戒処分の可能性がある。適正に実施されれば、米国の労働者のおよそ3分の2がこの大統領令の対象となる(もっとも、すでに接種済みの労働者がどのくらいいるかは不明だ)。今回の大統領は、パンデミックを制御しようとする多面的な計画の一環。計画には、雇用者にワクチン接種のための有給休暇の付与を求めたり、大型の屋内施設に入場する際に接種済み証明や陰性証明を求めたりする措置が含まれている。
MITテクノロジーレビューが以前指摘したように、有給休暇の付与はワクチン接種を推進する効果的な方法だろう。だが、今回の大統領令も、従業員数100人以上の大企業だけを対象としており、ギグワーカーについては言及していない。本来であればギグワーカーは減少する時給補填の恩恵を最も受ける立場にあり、米国の労働人口のかなりの割合を占める上に、ますます増加傾向にある。また、米国内の840万人に上る失業者の救済にもつながらない。
バイデン大統領はなぜ、ここに来て義務化に動いたのか。政府はこれまで、お金や食べ物、ビールなどのインセンティブがワクチン接種を後押しすると考えていたが、いまだ8000万人が未接種となっている。2回の接種を完了しているのは1億7700万人で、接種対象の62.5%、全人口の52%にすぎない。つまり、アメを使ったアプローチを試みたものの十分な成果が上がらなかったことから、今度はムチを選ぼうというわけだ。
米国ではなお、1日の新規感染者数がおよそ15万人を記録しており、大統領はこの悲惨な状態はワクチン未接種者に原因があると考えているようだ。なおかつ、米国の多くの人々が同じように感じているとも確信している。バイデン大統領は未接種者に直接的に語り掛けて、こう言った。「私たちは我慢してきました。しかし、我慢もそろそろ限界です。あなたたちの接種拒否が、私たちみんなに犠牲を払わせているのです」
9月13日6時更新:第1段落の「PCR検査」を「検査」に修正しました。