NASA火星探査車が岩石のサンプル採取に成功、史上初
NASAの火星探査車「パーサビアランス」は、ジェゼロクレーターから岩石と砂のサンプルを採取するのに成功した。同クレーターは火星古代の三角州の跡であり、生き物の化石が見つかる可能性がある。 by Neel V. Patel2021.09.03
米国航空宇宙局(NASA)のパーサビアランス(Perseverance)探査車は9月1日、火星から少量の岩石と土を集めることに成功した。火星でサンプルが採取されたのは今回が初めて。
パーサビアランスは、ジェゼロ(Jezero)クレーターの近くのロシェット(Rochette)と呼ばれる岩に穴をあけ、指ほどの大きさの岩のコアを上手く切り抜き、チタン製のチューブに収めた。チューブの内容物の画像を撮影してサンプルが実際に収められていることを確認した後、安全に保管し、さらに調査を進めることになる。 ミッションのチーフエンジニアであるアダム・ステルツナー博士は9月2日にツイッターで、サンプルを手に入れたことを発表した。
パーサビアランスは8月上旬にもサンプルの採取を初めて試みた。だが、実際には回収チューブの中には何も入っていなかった。残念なことに、岩のコアを取り出す過程で壊れやすい岩が粉砕されてしまい、その粉が採掘穴の近くの地面に落ちてしまったのだ。ロシェットが選ばれた理由の一つは、岩がより硬く、チューブに収められる可能性が高いと考えられたためだ。
サンプル採取はパーサビアランスが掲げる看板目標の1つだ。パーサビアランスには43のチューブが備わっており、NASAはそのすべてを火星の石や土のサンプルで満たして、いずれ地球に持ち帰りたいと考えている。長さ約45キロのジェゼロクレーターは、かつて三角州があった場所であると考えられている。数十億年前の火星が湿っていて生命が住むのに適した場所であったのだとすれば、ジェゼロクレーターは化石となる生き物が棲むのに最も適した場所の一つだっただろう。パーサビアランスは、ジェゼロクレーターに何が存在するのかを調べるための多くの機器を装備しているが、実際に生命存在の証拠や微生物の痕跡を探すには、地球上の研究室にサンプルを持ち帰る必要がある。
Now that is one beautifully perfect cored sample, if I do say so myself! Be patient, little sample, your journey is about to begin. #SamplingMars https://t.co/jOtNGKjeAe
— Adam Steltzner (@steltzner) September 2, 2021
火星から地球へ実際にサンプルを持ち帰るミッションは、NASAと欧州宇宙機構(ESA)の共同ミッションとして、まだ計画中の段階にある。サンプルを回収するための探査車を早ければ2029年に火星に送ることを目指しており、その場合、サンプルが地球に届くのは2031年になる。
パーサビアランスにとって今回のサンプル採取は、予定されている数多く作業の最初の一つにすぎない。パーサビアランスは今後もジェゼロのまわりの探索を続けるが、現段階では、火星で12回の飛行を成功させた小さなヘリコプターである「インジェニュイティ(Ingenuity)」に注目を奪われた観は否めない。インジェニュイティはもともとは技術的な実証実験を狙ったものだったが、予想外の堅牢性を発揮したことで、NASAのミッションの一環として、パーサビアランスと共に火星を探査するためのプラットフォームに変更された。
- 人気の記事ランキング
-
- This AI-generated Minecraft may represent the future of real-time video generation AIがリアルタイムで作り出す、驚きのマイクラ風生成動画
- Promotion Innovators Under 35 Japan Summit 2024 in Nihonbashi 2024年のイノベーターが集結「U35 Summit」参加者募集中
- Why AI could eat quantum computing’s lunch AIの急速な進歩は 量子コンピューターを 不要にするか
- Inside a fusion energy facility 2026年の稼働目指す、コモンウェルスの核融合施設へ行ってみた
- How ChatGPT search paves the way for AI agents 脱チャットGPTへ、オープンAIが強化するプラットフォーム戦略
- ニール・V・パテル [Neel V. Patel]米国版 宇宙担当記者
- MITテクノロジーレビューの宇宙担当記者。地球外で起こっているすべてのことを扱うニュースレター「ジ・エアロック(The Airlock)」の執筆も担当している。MITテクノロジーレビュー入社前は、フリーランスの科学技術ジャーナリストとして、ポピュラー・サイエンス(Popular Science)、デイリー・ビースト(The Daily Beast)、スレート(Slate)、ワイアード(Wired)、ヴァージ(the Verge)などに寄稿。独立前は、インバース(Inverse)の准編集者として、宇宙報道の強化をリードした。