汎心論とは、人間や動物だけでなく、木や植物、バクテリアなど、宇宙のいたるところに意識が存在すると考える思想だ。汎心論者は、素粒子の中にも心が部分的には存在すると考えている。意識が広く行き渡っているという考えは、多くの人にとって知的、そしておそらく感情的な理由から魅力的だ。しかし、それは経験的に検証できるのだろうか?意外なことに、できるかもしれない。なぜなら、最も人気のある意識についての科学理論の一つである「統合情報理論(IIT:integrated information theory)」は、すべてではないにせよ、多くの特徴を汎心論と共有しているからである。
米国の哲学者であるトーマス・ネーゲルが主張しているように、あるものが意識を持つのは、「○○であるとはどのようなことか」という問いに当てはまる「何か」が存在する場合だ。覚醒状態にある人間の脳も、特定の何かであるような感じがする。
IITでは、システムの統合情報という独自の数量を定義しており、ギリシャ文字のφ(ファイ)で表される。φがゼロの場合、システムは何も感じない。実際、システムは構成要素に完全に還元されるため、全体としては存在しない。φが大きければ大きいほど、システムはより意識的であり、より還元されないものとなる。システムの正確で完全な記述があれば、IITは経験の量と質の両方を予測する(もしあれば)。IITでは、人間の脳の構造上、人間はφの値が大きく、動物はより小さい(しかし正の)値を持ち、古典的なデジタル・コンピューターはほとんどゼロであると予測している。
人のφの値は一定ではない。幼児期には自我の発達に伴って増加し、認知症などの認知障害の発症に伴って減少することがある。φは睡眠中に変動し、夢を見ている間は大きくなり、夢を見ていない眠りの深い状態では小さくなる。
IITは、想定し得るあらゆる意識的な経験について、5つの真の本質的な特性を特定することから始める。例えば、経験は確固たるものである(排他的である)。つまり、ある経験は、それ未満のものではなく(海がもたらした青という色の感覚だけを経験し、その色を心にもたらした海の動きを経験しないことはできない)、また、それを越えるものでもない(海の存在を経験しながら、背後の木々の生い茂った枝葉を知覚することはできない)ということだ。
第2段階として、IITは、脳、コンピューター、松の木、砂丘など、あらゆるシステムが何かしらを感じるために示すべき5つの関連する物理的特性を導き出す。IITにおける「メカニズム」とは、システムの内部で因果的役割を果たす全てのもので、コンピューターの論理ゲートや脳のニューロンなどがこれに …