ニュースフィード「改良」で
メディア企業が悲鳴
Facebookのニュースフィード仕様の調整は、ユーザーよりも自社のため by Michael Reilly2016.06.30
フェイスブックは、ユーザーの手にパワーを戻す方針を発表した。ある程度、だが。
フェイスブックは「ユーザー優先のニュースフィード改良」と題した投稿で、投稿の表示優先順位を決定するアルゴリズムを調整していると伝えた。家族や友だちの投稿を優先し、BuzzFeedやニューヨーク・タイムズ(テクノロジー・レビューも!) などのパブリッシャーがFacebookページでシェアする投稿の優先順位は相対的に低くなる。さらに同投稿にはFacebookの「News Feed Values」について説明があり、フェイスブックはユーザーに「情報を与え」て「あらゆる視点を受け入れる」ことに関心があると特に強調した。
まず、以下の部分を見てみよう。
当社のインテグリティで重要となるのは、あらゆる視点や見解を受け入れ、ランキングを利用してユーザーにとって最も重要な興味が持てる話題や情報源にユーザーをつなげることです。
立派な見解に思えるが、ユーザー自身があらゆる視点や見解を受け入れない場合はどうなるのか? 「重要な興味が持てる」ことは本質的に「あらゆる視点や見解を受け入れ」ることに矛盾する。これは以前から持ち上がっている「エコーチャンバー(共鳴室)効果」と呼ばれる葛藤で、よく研究されてきている(by Facebook employees, in fact)。
しかし、「包括的」を取るか「興味が持てる」を取るかの選択肢に直面したとき、フェイスブックは常に「興味が持てる」を選択する。「包括的を捨てる」のではなく、ビジネスとしてそうするに決まっているのだ。Facebookは基本的に、人々からの注目を獲得することで価値を創造する。フィードへの注目が高いほど、Facebookは広告に高額を請求できる。
ここで問題なのは、フェイスブックが巨大化したことで、好むと好まざるに関わらず、フェイスブックのニュースフィードが史上最も大きな影響力を持つメディアのひとつになったことだ。16億人のユーザーの情報入手方法に深刻な影響を与える。そして実際、フェイスブックは「News Feed Value」のひとつとして「フィードは情報を提供するもの」と記している。これが意味する内容の説明が以下だ:
… フィードは、最新ニュースやあなたのお気に入りの有名人の話題、地元ニュース記事、レシピに関するものかもしれません。私たちはどのような情報があなたにとって個人的に興味を引き有益になるのか把握しようと常に取り組んでいますので、あなたのフィードの上位にはその種の話題が表示されます。
言い換えると、「情報を提供する」は「人々が注目するものなら何でも伝える」という意味だ。これは理解できる: Facebookは同サイトへの注目度を最大化することに従事している企業だ。ユーザーが継続的に訪れるエクスペリエンスを求めている。最近のオリジナル投稿数の減少や、Snapchatのような他の注目度重視のサービスの登場で、Facebookは厳しい競争に立たされていることに気づいている。
そこで、パブリッシャーからの話題が表示される時よりも友達や家族の投稿を受け取った時の方がユーザーのフィードへの注目度が高いとフェイスブックは考えているようだ。これは、パブリッシャーにとっては悪い知らせかもしれない (The Vergeは30日、このアルゴリズム変更について伝える同サイト記事の中で読者に「さようなら!」と記した)。今年これまでにFacebookが実施した同様のアルゴリズム調整で、The Vergeはトラフィックへの大きな打撃を経験済みだ。
しかし、フェイスブックはパブリッシャーを重要視していないし(コンテンツに数百万ドルを支払うパブリッシャーでさえ)、重要視する必要がどこにもない。フェイスブックはオーディエンスを支配している。オーディエンスは何が起ころうとFacebookを訪れる。
ここで問題になるのは: メディア大手としてのフェイスブックの責任は何か?だ。 同社が今日発表した声明からは、例えば”influence voter turnout in an election“のように、人々に十分大きな影響を与えているとしても、報道機関としてのフェイスブックにほとんど興味がない。
繰り返すが、Facebookが友達や家族、パーティーで一度出会っただけの不特定多数の人々をチェックするために訪れる場である限りは、そこに問題はない。しかし、フェイスブックは単独で世界最大とも言える情報配信源になった。にもかかわらず、人々が何を目にすべきなのか、というはるかに難しい問題に取り組むことなく、人々が好むものを表示することを選択している。
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- マイケル レイリー [Michael Reilly]米国版 ニュース・解説担当級上級編集者
- マイケル・レイリーはニュースと解説担当の上級編集者です。ニュースに何かがあれば、おそらくそのニュースについて何か言いたいことがあります。また、MIT Technology Review(米国版)のメイン・ニュースレターであるザ・ダウンロードを作りました(ぜひ購読してください)。 MIT Technology Reviewに参加する以前は、ニューサイエンティスト誌のボストン支局長でした。科学やテクノロジーのあらゆる話題について書いてきましたので、得意分野を聞かれると困ります(元地質学者なので、火山の話は大好きです)。