AI採用時代の転職市場を突破するための4つのヒント
企業や組織の採用プロセスでAIが利用されることが多くなってきている。こうした求人市場で高評価を得て、採用にこぎつけるには、従来とは異なるやり方が求められる。 by Hilke Schellmann2021.08.12
ジョブマッチング・プラットフォームや人工知能(AI)を活用したゲーム・面接などを通じて、企業は採用プロセスを効率化するためにAIに頼ることが多くなってきている。しかし、求職者の中には、こうしたテクノロジーに不満を感じたり、誤解されていると感じる人もいる。
マリカ・デヴォーは、ブルックリンで職業訓練を提供している非営利団体、ホーププログラム(HOPE program)の訓練生だ。仕事を探しているデヴォーに、ビッグファイブ性格特性(開放性、誠実性、外向性、協調性、神経症傾向の5因子)について候補者を評価する90秒の適性検査を受けてもらった。
検査の結果は、現実的でのんびりしているというものだった。だが、デヴォーはAIが読み取った自分の性格について納得しなかった。また、わかりにくいテストだと感じた。「この適性検査を受けたら、職を獲得する機会や、最終的に自分が輝ける機会を失うことになるだろうと思います」。
では、仕事に応募するときに、AIを自分の味方につけるにはどうしたらいいのだろうか?
MITテクノロジーレビュー[米国版]のポッドキャスト「我ら機械を信ず(In Machines We Trust)」の最新エピソードでは、キャリアとジョブマッチングの専門家に、AIの影響力がますます高まる求人市場でうまくやるための実践的なヒントを尋ねた。
履歴書に関する従来のアドバイスは忘れよう
ジップリクルーター(ZipRecruiter)の共同創業者でもあるイアン・シーゲル最高経営責任者(CEO)は、履歴書にはユニークなデザインや配色を選んだり、しっかりと仕事内容を記述したりするのではなく、できるだけシンプルでわかりやすくすることに重点をおくべきだと述べる。
「世間一般の通念に従えば、仕事探しであなたは打ちのめされるでしょう」とシーゲルCEOは言う。「必要なのは最もシンプルで、最もつまらない履歴書のテンプレートです。洞穴に住む原始人のように、できるだけ短く、簡潔・明瞭な言葉で書いてください」。
ほとんどの場合、求職者が職に応募すると、履歴書はまず自動化された応募者追跡システム(ATS)で処理されるとシーゲルCEOは言う。面接へと進む可能性を高めるには、AIが正確に解釈できる履歴書を提出する必要がある。
「AIがあなたの履歴書を解析しやすくなるように、短くて説明的な文章を使ってください」とシーゲルCEOは言う。自分のスキルは明確に記載し、可能であれば、それをどこで学んだのか、どのくらいの期間使用したかなどについての詳細と、専門知識・技能を証明する免許番号や認定番号も加える。「AIは、あなたがどんな人間であるかを理解し、人間と面接させるかどうかを判断しようとしています。ですから、宣言的かつ定量的であることが望ましいのです」。
また、自分が持っているよりも多くの経験を必要とする仕事であっても、募集要項に記載されている資格のいくつかを満たしているなら、応募をためらうことはない。
「記載されているスキルのどれかを持っているのなら、ぜひ応募してください。あなたがその仕事にぴったりマッチしているかどうかは、アルゴリズムの判断に任せましょう。上か下かに振り分けてくれますから」。
複数のバージョンの履歴書を作成しよう
AI向けに履歴書を簡素化すると、流れや読みやすさが損なわれるのではないかと心配するかもしれない。そうであれば、「人間が見るための別バージョンを用意してください」とニューヨーク大学ワッサーマン・キャリア開発センター(NYU Wasserman Center for Career Development)のグレイシー・サルキシアン暫定事務局長は言う。
「何人かの学生は、『あなたたちに言われたとおりにしました。履歴書がキーワードで満たされるようにしました。でもその結果、なんだか安っぽいマーケティング資料のようになってしまいました』と訴えるのです」とサルキシアン暫定事務局長は述べる。そう言われたときには、自分にあったデザインやフォーマットの履歴書を別途作成して、電子メールで送信したり、面接時に手渡しするように指示する。
さらに、応募する仕事の内容に合わせて、履歴書を修正する必要があるとサルキシアン暫定事務局長は述べる。各求人情報には、雇用主の応募者追跡システムが求職者に優先順位をつけるために使用するであろうキーワードが含まれている。自分の経験にふさわしいキーワードをいくつか選び、履歴書全体にそれらを散りばめよう。
書き終えた履歴書をAIでチェックしよう
履歴書を書き終えたら、応募する職務内容といっしょに、ジョブスキャン(Jobscan)などの自動履歴書チェックツールにアップロードしよう。ジョブスキャンは、あなたの履歴書が求人内容にどれだけマッチしているかを採点し、各応募先企業の応募者追跡システムに最適化する際に役に立つ。ジョブスキャンのアカウント作成は無料で、ベーシックなメンバーシップなら、月に2回マッチ率の計算ができる。
ヴィーモック(VMock)もまた、大学やその他の機関向けにソフトウェアを提供している。このソフトウェアはユーザーの履歴書に対して、日付の不一致を指摘したり、応募する職務とはあまり関係のない過去の職務についての記述を簡略化するなどして評価してくれる。
ヴィーモックのアルゴリズムは、ユーザーが転職に有利な技能を特定するのにも役立つ。ヴィーモックの共同創業者兼製品責任者のキラン・パンデは、「あなたのした別のことが、採用担当者が探しているソフトスキル(対人能力)にもなります」とプログラムが示してくれると言う。例えば、「あなたにはコミュニケーション能力があります。マーケティングに特化した能力であるとは限りませんが、コミュニケーション能力が優れています。あなたは別の仕事を通じてコミュニケーション能力が高まったのですが、それについても書いてください」といった具合だ。
AIによる面接の練習をしよう
AIとの面接に備えるために、AIを利用しない手はないだろう。ヴィーモックをはじめとするいくつかの企業が、バーチャル面接の準備を支援するツールを提供している。
インタビュー・ストリーム(Interview Stream)は、Webカメラを介してユーザーに質問をし、ユーザーはその回答を記録して確認できる。このプラットフォームは、個人ユーザーには30日間無料のトライアルを提供しており、一部の機関を通しても利用できる。ビッグ・インタビュー(Big Interview)は、面接での受け答えについて、AIを使用して指導してくれる。個人向けに3つのパッケージを提供しており、価格は1カ月間が79ドル、3カ月間が149ドル、6カ月間が249ドルとなっている。
HOPEプログラムでは、トーク・ハイアリング(Talk Hiring)というプラットフォームを使用している。トーク・ハイアリングでは、それぞれ5つの質問からなる10分間の模擬面接を実施しているおり、回答内容に問題、行動、結果が含まれているかどうか、話すスピードや声の大きさは適切か、といったことを考慮して面接対象者を採点する。トーク・ハイアリングは、個人ユーザーには無料のトライアルアカウントを提供しており、年間1人あたり18ドルの費用で団体組織とも提携している。
ほかに、ハイアー・ビュー(HireVue)、レトリオ(Retorio)、ヨブス(Yobs)などのいくつかのAI面接サービスを、予定された面接の前に試すことができる。これらの中には、パフォーマンスに基づいて作成された人格プロフィールを見ることができるものもある。
「AIと面接をすると、AIをまるで他人のように感じますよね?顔のない他人のように。真っ白な画面なのですから」とサルキシアン暫定事務局長は言う。しかし、このようなプラットフォームでリハーサルをすることで、Aiによる面接のプロセスに慣れることができる。「練習できますし、練習すればするほど、こういうことが得意になります」。
また、雇用主の採用プロセスや使用する評価ツールについての情報が多く得られれば得られるほど良い。求職者は、AIを利用したゲームや面接の必勝法について、ユーザーが作成した動画をユーチューブ(YouTube)などで見つけることもできる。ただし、これらのアドバイスの質や正確さはまちまちである。
AI研究者や障害者の権利擁護団体の中には、AI採用ツールのさらなる精査を求める声もあるが、AIが雇用に与える影響は、今後数年でますます大きくなりそうだ。これらのツールがどのように作られ、使用されるのかが明らかになるにつれ、求職者はアルゴリズムの時代で成功するための新しい方法を見つけなければならなくなるだろう。
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- ヒルキ・シェルマン [Hilke Schellmann]米国版 寄稿者
- ニューヨーク大学助教授/エミー賞の受賞歴を持つジャーナリスト。フリーランス記者としては人工知能(AI)分野を取材している。