2020年はアイシャ・エバンスにとって激動の一年となった。自身が最高経営責任者(CEO)を務める自動運転車のスタートアップであるズークス(Zoox)が、同年の夏にアマゾンに買収されたのだ。買収額は12億ドルと報じられた。さらに、12月にズークスが披露した同社の車は、自動車というものに対する人々の認識を大きく覆すものになった。
利用目的は自動運転タクシーだが、車というよりハイテク馬車のように見える。スライド式のガラスドアはどちらの側からでも乗客を迎え入れられる。さらに車体の外側のそれぞれの角には「センサーポッド」が取り付けられており、複数のライダー(LIDAR:レーザーによる画像検出・測距)やレーザー装置やカメラが運転を補助する。床下には電気モーターが搭載されており、最高時速約120キロで乗客を目的地にすばやく送り届けることができる。
ズークスの車はゼロから作られた数少ない無人運転車両の1つだ。さらにエバンスCEOによれば、同社の車は決して個人で所有するものではないという。車両のテストを実施しているサンフランシスコやラスベガスのような都市で、アプリを使った配車サービスを立ち上げることを計画している。
産業を変え、都市の移動手段を変革するとはどういうことなのか? エバンスCEOが語った。
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——あなたの定義ではズークスとは何の会社なのでしょうか?人工知能(AI)の企業でしょうか?ロボット工学の企業でしょうか?
AIやロボット工学を活用している輸送会社です。電気自動車やソフトウェアを取り巻く新技術を全て活用しています。そうしたもの全てを融合させ、根本的に新しい輸送業界を切り開こうとしています。
サンフランシスコのような住宅問題を抱えていてビジネスフライトに不安のある都市では、不動産占有面積の30%が駐車場に使われています。もし、A地点からB地点への移動にズークスを利用していたとすれば、そうした建物を入れ替えて、企業や住宅向け、あるいは公園として再生できます。
ズークスの見地からはもう1つ非常に重要なことがあります。こうしたことを実現するため、センサーやコンピューターを活用しているということです。当社にいつも寄せられる質問があります。「なぜ車を作っているのか?」というものです。そうですね、現在の乗用車は人間の運転手を想定して構築・設計されていることが理由です。AIが運転するために最適かつ最も安全なものとなるよう、車両を再構築・再設計することが、当社の使命なのです。
——自動運転車は、道路上にいないときの生活にはどのように影響するでしょうか?
現 …