米西海岸で森林火災が続発、
「温暖化に拍車」の悪循環
カリフォルニア州やシベリアで大規模な森林火災が発生し、二酸化炭素排出量の増加が予想されている。大規模な森林火災は今後も続発し、温暖化に拍車をかけるという。 by James Temple2021.08.02
米国西海岸で猛威を振るう山火事は、大気を二酸化炭素で満たし、パンデミックによる昨年の排出量減少の半分以上を帳消しにしてしまった。まだ7月だというのに、だ。
データは不穏な悪循環の発生を示している。気候変動により暑く乾燥した状態が生じ、その影響で破滅的な火災がますます頻発し、火災によって放出された温室効果ガスがさらに温暖化を加速させる。
この問題は今後数十年の間に、地球上の多くの地域でさらに悪化するだろう。猛烈な火災は、コミュニティや緊急対応職員、大気環境、人体、森林に被害をもたらすばかりでなく、気候変動対策におけるわずかばかりの進展をも脅かすのだ。
カーボン・モニター(Carbon Monitor)のデータによると、カリフォルニア州、アイダホ州、オレゴン州、ワシントン州において、化石燃料由来の二酸化炭素排出量は昨年、合計で約6900万トン減少した。パンデミックにより、陸上運輸、航空、産業が原因の汚染が激減した結果だ。だが、欧州委員会コペルニクス大気モニタリングサービス(European Commission’s Copernicus Atmosphere Monitoring Service)からMITテクノロジーレビューが提供を受けたデータによると、7月1日から25日までの間に上記の4州では、火災によって約4100万トンの二酸化炭素が発生した。
これは例年の同時期をはるかに上回る水準だ。しかも米国西部では2020年にも、巨大な山火事が猛威を振るったばかりだ。昨年1年間、カリフォルニア州の火災だけで1億トン以上の二酸化炭素を排出した。これだけでも、西海岸地域全体の年間排出量の減少分を上回っている。
「(温室効果ガスは)着実に減少していますが、そのペースは遅く、山火事と比べると霞んでしまいます」と、カーボンプラン(CarbonPlan)の気候科学者、オリアナ・チェグウィッデンは言う。
シベリアで何千平方キロメートルにも燃え広がっている巨大な山火事も、ロシア東部一帯の空を黒く染めながら、数千万トンの二酸化炭素を排出していると、コペルニクス大気モニタリングサービスは7月初めに発表している。
火災と森林由来の排出は、世界の多くの地域で今後も増加の一途をたどると予測されている。今後数十年間で気候変動が加速し、高温で乾燥した環境ができることで、樹木や植物が火種に変わるのだ。
ユタ大学とカーボンプランの研究チームは最近の研究で、今後数十年で排出量が大幅に減少するシナリオを想定したとしても、火災リスク(ある地域が1年間に中度〜重度の火災に見舞われる確率)は2090年までに全米で4倍に跳ね上がる恐れがあると指摘した。排出量を野放しにすれば、米国における火災リスクは、今世紀末までに現在の14倍に跳ね上がる可能性すらあるという。
火災由来の排出は「すでにひどい状態ですが、これからも悪化する一方です」と、論文著者の一人であるチェグウィッデンは語る。
負の連鎖によって森林が消えていく
長期的にみると、増加する山火事が排出量と気候にもたらす影響は、森林がどれだけ早く回復し、炭素を吸収できるか(あるいはできないのか)に左右される。そして森林の回復速度と炭素固定能は、主要な樹木の種類、山火事の深刻さ、そして局所的気候条件が森林形成の時代からどれだけ変化しているかによって決まる。
カミール・スティーヴンス=ルーマンは、博士研究に取り組んでいた2010年代前半、毎年春から夏にかけてアイダホ州のフランク・チャーチ=リバー・オブ・ノー・リターン原生自然保護区の高地林をトレッキングし、火災後の影響を調べた。
彼女は針葉樹が回復する場所としない場所、チ …
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